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第94回センバツ高校野球

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#初めての春

第2部 伊万里センバツ・支える人々/2 甲子園プロジェクト 地域挙げて裾野広げ /佐賀

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西部ガスの選手(中央)からアドバイスをもらいながら基礎練習をする中学生たち 拡大
西部ガスの選手(中央)からアドバイスをもらいながら基礎練習をする中学生たち

 <第90回記念選抜高校野球>

 「軸足からもう片方の足に、スムーズに力を移して、打つ。そう。もう一回」。今月3日、伊万里市の国見台球場内で声が飛び交った。社会人野球チームの西部ガス(福岡市)の選手ら28人が身ぶり手ぶりで指導する。伊万里市と有田町の中学8校から集まった球児93人は熱心に耳を傾けた。

 伊万里市と有田町からなる「伊西(いせい)地区」から甲子園出場校を送りだそうと、伊万里市は2013年度、「目指せ!甲子園プロジェクト」を始めた。社会人野球選手によるこの野球教室は、地元の伊万里ガスが取引先の西部ガスから協力を得て、プロジェクトのスタート時から毎年1回、開催している。

 「伊万里市や地域の人の思いが結集して、伊万里のセンバツ出場につながったんだと思う」。駒大苫小牧監督時代に夏の甲子園で連覇した西部ガス監督の香田誉士史さん(46)=佐賀商出身=は力を込めた。

 プロジェクトは、現在の伊万里高校の主力を担う2年生が中学1年だった時に始まった。上のレベルで切磋琢磨(せっさたくま)する選手から直接指導を受ける野球教室を通じて、モチベーションを上げる球児がいる。伊万里高校の犬塚晃海(てるみ)主将(2年)も当時を「うまい人の考え方やプレーを見ることができ、『こういう風になりたい、なれるかな』と、すごく刺激になった」と思い出す。今回参加した伊万里中2年の川田遼太さん(14)は練習後「甲子園に行けるよう、これから自分も頑張らなくちゃ」と目を輝かせた。

 プロジェクトは市だけではなく、伊万里商工会議所や観光協会なども加わっている。「地元の方に何らかの形で恩返ししたいと思って始めた取り組み」と伊万里ガス社長の藤島幸雄さん(66)は振り返る。同社は2年前から、国見台球場で西部ガスと社会人野球チームとの練習試合を中学生に見せている。藤島さんは「地域を挙げてやってきた裾野を広げる活動が少しずつ芽を出してきた」と感慨深げだ。

 伊万里市は「甲子園プロジェクト係」を設置し、レベルアップを目的に13~15年度には九州各地の強豪高校との強化試合を各年度8試合実施した。また、甲子園出場経験のある監督から指導方法やトレーニング法、体作りに直結する食事に対する意識などを学ぶ講習会も開いた。今年度は小学生約30人が夏の甲子園に行って生の試合を観戦する「少年球児甲子園派遣事業」など、底辺拡大に向けてさまざまなサポートをする。派遣前には、伊万里高校の吉原彰宏監督(43)が講師となり、観戦の際のポイントとして、全力疾走やカバーリング、声掛けの重要性を伝えた。

 担当する市職員の西尾義久さん(44)は「地元で野球をやりたいけど、強い学校がないから県外に出て行く子もいる。強い学校があれば地元でも野球を十分にやれると感じ、人口流出の歯止めにもなるのでは」と、町づくりとの関係性も視野に入れている。【池田美欧】

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