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社説

中国主席の「任期撤廃」 歯止めなき強権を憂える

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 中国の憲法改正案に「2期10年」という国家主席任期の上限撤廃が盛り込まれた。3月5日からの全国人民代表大会(全人代=国会)で改正案が成立し、習近平(しゅうきんぺい)国家主席の3期目に道を開くことは確実だ。

     1982年に全面改正された現憲法は毛沢東(もうたくとう)主席に権力が集中し、文化大革命などの混乱が起きた反省から任期の制限規定を盛り込んだ。その撤廃が過度な権力集中に結びつくことを憂慮せざるをえない。

     「連続任期は2期を超えてはならない」という中国語ではわずか10字の削除だ。しかし、規定は「指導者の終身制を復活させない」というトウ小平(とうしょうへい)氏ら文革で迫害された当時のリーダーの意思を反映していた。

     江沢民(こうたくみん)、胡錦濤(こきんとう)という過去2代の国家主席は2期10年で退き、制度的な権力継承の枠組みができたはずだった。しかし、任期制限がなくなれば、再び「人治」の時代へと逆戻りしかねない。

     海外の中国人活動家らは辛亥(しんがい)革命後、皇帝の座を狙った袁世凱(えんせいがい)の「復辟(ふくへき)」に例えて、新たな帝政と批判している。中国国内にもトウ小平の遺志に反すると懸念する声がある。

     情報革命とグローバル化で冷戦終結以来の激動期といわれる。プーチン露大統領やトルコのエルドアン大統領ら長期政権で難局乗り切りを目指す指導者も現れている。習氏もそれに倣いたいのかもしれない。

     昨年の第19回共産党大会では後継候補が最高指導部の政治局常務委員会に入らなかった。長期政権が視野にあったのではないか。2022年の第20回党大会で3選すれば、28年まで国家主席を務めることになる。

     憲法には「習思想」が明記される。集団指導体制が党是とはいえ、習氏は毛時代の個人崇拝を思わせる権力を握りつつある。終身制復活の可能性も否定できない。

     「絶対的権力は絶対に腐敗する」

     これは歴史が示す真理だ。憲法改正では国家や政府の監督機関として国家監察委員会の新設が盛り込まれる。しかし、最高権力者の権力までは制御できまい。

     内政だけでなく、外交にも強権体質のひずみが表れれば、日米や周辺諸国との摩擦も増す。国民の意思が反映されない体制だからこそ、歯止めのない権力は一層、危険だ。

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