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武田 砂鉄・評『極夜行』角幡唯介・著

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雑念と信念がぶつかる極限の果てに見たもの

◆『極夜行』角幡唯介・著(文藝春秋/税別1750円)

 冒険と呼ばれる行為の本質は「現人間界のシステムの外側に飛び出すこと」と記す探検家が選んだのは、太陽が一切昇らない極夜(きょくや)の北極を、橇(そり)を引く犬と共に歩き続けること。人工的な照明=疑似太陽に依存した私たちが体験したことのない、根源的な光を求めるために闇に浸る。4カ月もの間、極寒の暗闇に身体をあずけた記録が本書だ。

 自らの位置を確認する唯一の機器である六分儀を、出発してわずか15キロの地点で失い、地図とコンパスのみで進むという原始的な旅を余儀なくされる。当初こそ、自分自身の感覚を研ぎ澄ませていたものの、やがてその己の感覚こそが過ちの源であり、唯一信頼すべきは「上空で細々と光る北極星だけだった」と気づく。人間界のシステムを疑いながら旅に出た揚げ句、自分という人間を疑い始める。毎日のように変転する自分への信頼感…

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