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第94回センバツ高校野球

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#初めての春

第2部 伊万里センバツ・支える人々/4 マネジャー 欠かせない献身的な戦力 /佐賀

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練習後に冷水でコップを洗う5人のマネジャー。素手のため「寒くて寒くて大変」と言うが、笑みは絶えない 拡大
練習後に冷水でコップを洗う5人のマネジャー。素手のため「寒くて寒くて大変」と言うが、笑みは絶えない

 <第90回記念選抜高校野球>

 「行きまーす」。高い声を出したマネジャーが、右腕を挙げてピッチングマシンにボールを一つ入れる。声の先にいる選手は合図を聞いて腰を落とす。マシンからはき出されたボールは地面をはねるゴロとなり、選手のグラブに収まった。

 伊万里高校の守備練習の「ゴロ出し」にはマネジャーが加わる。「慣れるまでは不安だったが、やっている一つ一つが選手のためと思うと楽しい」と柳本亜月(あづき)さん(2年)は声を弾ませる。

 5人いるマネジャーの仕事は選手用の飲み物の準備や部室の掃除、ボールが入った箱の移動といった雑用から、守備練習の手伝いや短い練習時間を徹底的に管理するタイマーの操作など多岐にわたる。ポケットにペンとメモ帳を入れていて、吉原彰宏監督(43)が選手に告げたアドバイスを書き留めることもある。その時のメニューに合わせて、各自が指示を受ける前に自ら判断して行動している。

 「マネジャーも戦力の一つ」と吉原監督は言い切る。「覚悟を決めて来てくれている。すごく献身的で細かいところにも気付いてくれる」と目を細める。

 2年生は2人で、柳本さんは中学時代はバレー部主将で頼りになるお姉さん、西牟田真緒さんは聞き上手なお母さんのような存在。1年生の田中穂乃香さんは意志を曲げないしっかり者で、立部ゆりかさんは周りを笑わせる癒やし役、中島菫(すみれ)さんは縁の下の力持ちと、個性があふれる。

 5人は練習後によく部室で「女子会」をし、テレビや芸能人の話など今時の女子高生らしい話題にも花を咲かせる。学年に関係なく仲が良く、立部さんは「家族みたいに何でも話せる存在」と話す。

 マネジャーとしてのやりがいも見いだしている。西牟田さんは「選手の成長を間近で感じられるところ」と裏方ならではの面白さを話す。200メートルの走り込みのタイムを計っていると、選手のタイムが日々縮んでいく。「自分のことのようにうれしかった」と、選手の成長をそれぞれが自分のことのように喜んでいる。

 普段の生活の中ではいつもふざけてばかりの選手たちだが、練習や試合の時に見せる同世代の真剣なまなざしは、マネジャーに格好良く映る。中学野球の試合を観戦した際に、選手の気迫に触発されて「仲間になれたら楽しいかな」と思いマネジャーとなった柳本さんは「甲子園はマネジャーにとっても聖地。遠かった甲子園に行けるなんてどきどきする」と興奮を抑えきれない。

 柳本さんは甲子園ではスコアラーとしてベンチに入り、選手の息づかいを間近で感じる。「選手も緊張すると思うが、みんながいつも通りプレーできるように自分だけはどんな時も笑顔で支えたい」。同じように白球を追う仲間と共に挑む戦いに向けて、今日もマネジャーはグラウンドを駆け回る。【池田美欧】

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