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第103回全国高校野球選手権

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センバツ90/3 完全さへの希求、共感 米国人ジャーナリスト ロバート・ホワイティングさん

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 <第90回選抜高校野球>

ロバート・ホワイティングさん(75)

 1980年夏の甲子園で全6試合に先発し、4完封を記録した早稲田実の荒木大輔投手。2006年夏の決勝で延長十五回、そして引き分け再試合を投げ切った同じ早実の斎藤佑樹投手。肩を酷使し、野球人生を棒に振るリスクを負いながら投げ続ける彼らを、最初は全く理解できなかった。

 「アメリカ人は、アマチュア野球は楽しむため、プロ野球は金を稼ぐためと割り切っている」。プロ入りを目指す選手なら無理は絶対しないし、周囲も止めるべきだと思った。

 けれども、日本の高校の野球部や甲子園の取材を重ねるうちに、自らのプライドや、応援してくれる人たちへの思いに突き動かされてマウンドに上がるエースたちに共感を覚えるようになる。日米の野球の違いは著書「菊とバット」(77年)で分析し、熟知しているつもりだったが、「甲子園は選ばれた者だけが立てる。一生に一度のチャンスに全てを懸けようとしている彼らを見て、人生にはお金に換算できない価値があると気付いた」。

 1年間で練習を休めるのは元日だけ、素振りは毎日1000回、「千本ノック」としてひたすらノックを受けさせられる--。スポーツとして楽しむのではなく、武道や茶道のように動作を繰り返すことで完璧な「形(かた)」を身につけようとする高校野球は、「人生の意味」が凝縮されていると思うようになった。

 完全なものになりたい、完全な何かを生み出したいという、誰もが心の奥底に持つ願いをストレートに追求しているのが高校球児たちだった。「納得いくまで取材を続け、100%と思えるまで原稿を書き直す私のやり方は、間違いなく彼らの影響を受けている」

 高校野球に魅了される一方、改善すべき点も多いと感じる。生徒の自殺という最悪の結果を招きかねない指導者の体罰は、根絶しなければいけない。プロとアマの関係を見直し、球児がプロ選手のハイレベルな技術を吸収できるようにすることも、日本野球界の活性化や、競技人口減少に歯止めをかけるために必要と思っている。

 「高校野球の人気には波があるが、どう生きるべきかを教えてくれる甲子園の価値が失われることはない」。新たなスターが現れ、感動を与えてくれるのを楽しみにしている。=つづく

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