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首都直下地震 帰宅困難者を船で

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首都直下地震を想定し、国土交通省関東地方整備局が昨年11月に荒川で実施した物資輸送訓練=同局、国土地理院提供 拡大
首都直下地震を想定し、国土交通省関東地方整備局が昨年11月に荒川で実施した物資輸送訓練=同局、国土地理院提供

 今後30年以内にマグニチュード(M)7級の地震が発生する確率が70%程度と予測されている首都直下地震。その帰宅困難者対策として東京都を流れる河川が注目されている。国土交通省は、大勢の観光客が都心に集まる2020年東京五輪・パラリンピックを見据え、国内外からの観光客らを船で羽田空港などに運ぶ検討を始めた。

 ●施設確保いまだ

 東京都が公表した被害想定によると、首都直下地震が発生した場合、都内では死者が最大で約9700人、建物被害が約30万棟に上ると見込まれる。道路や鉄道などの交通網も寸断され、517万人が帰宅困難者になると予想される。一方、帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設は昨年7月時点で32・8万人分しか確保できておらず、都は今後も施設確保などの対策に取り組む方針だ。

 近年の観光客数の増加も帰宅困難者の発生に拍車をかけることが予想される。都によると、都内への国内旅行者数は増加傾向にあり、16年は10年前より約9000万人多い5億1430万人だった。都内を訪れた外国人旅行者数も、同じく約830万人多い1310万人に上った。政府は昨年2869万人だった訪日外国人旅行者数を20年までに4000万人に増やす計画で、災害時には外国人の避難誘導や防災情報の発信が課題となる。

 そこで、観光客らを輸送する新たなルートとして国が着目したのが、都心周辺を流れる荒川、江戸川、多摩川、鶴見川だ。国交省は元々、災害時には4河川とその河川敷を物資輸送などに活用することを計画し、各河川で緊急用の船着き場や河川敷道路の整備を進めてきた。

 ●旅行者は羽田へ

 荒川下流では13年に「防災施設活用計画」を策定し、災害時の船着き場や河川敷道路の活用方法を定めた。残る3河川も、東京五輪開幕までに同様の計画を順次策定する方針だ。さらに首都直下地震では、津波が河川をさかのぼる恐れが南海トラフ巨大地震などと比べ小さいと見込まれることから、4河川は物資だけでなく人員輸送にも活用できるとしている。

 具体的には、都心部の被害が大きくJRや地下鉄、道路網が寸断された場合、国内外からの旅行者には被害の少ない都心周辺部のターミナル駅に移動してもらい、そこから船で川を下って羽田空港へ向かってもらう。また、東京近郊在住で帰宅困難となった住民についても、河川上流の多摩地方や埼玉県などに運ぶことを考えているという。

 船は海上保安庁などの公的機関や民間事業者の所有分を活用することを検討。国交省の担当者は「急がば回れではないが、一度都心から離れたとしても、船は渋滞もなく定時性も確保できる。輸送にかかる時間や輸送能力はこれから検討したい」と話す。来年度から関係機関との調整を本格化させる。

 ●屋形船も活用

 東京都も都管理の隅田川で帰宅困難者や物資輸送の検討を進めている。都は140~200人乗りの防災船を計3隻所有しており、普段は外部に運航を委託し水上バスなどとして利用している。災害時には、緊急支援物資や医療機器のほか、帰宅困難者や救急隊員の輸送にも活用する方針だ。都は関東旅客船協会などの民間事業者とも災害時の輸送協定を結んでおり、隅田川名物の屋形船も活用される計画だという。【金森崇之】

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