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新時代の中国

第3部 全人代を前に/下 校内録画し常時監視 「まるで監獄だ」生徒反発

教室を常時監視するカメラ映像が並ぶ「監視室」のモニター画面。休み時間や放課後も撮影している=中国山西省で2018年1月、河津啓介撮影
教室の天井近くに設置された白い半球形の監視カメラの下、授業を受ける生徒たち=中国山西省で2018年1月、河津啓介撮影
山西省の位置

 中国山西省にある公立中学校の教頭が、校内の「監視室」のドアを開いた。パソコン数台に全教室の監視カメラ映像が映し出されていた。ある教室を拡大すると、生徒の表情はもちろん、手にする教科書の表題まで判別できた。「24時間撮影で録画を1カ月保管。中国では教室へのカメラ設置は当たり前だ」。教頭はこう説明した。

     中国の教育当局は近年、「安全」「いじめ対策」を理由に監視カメラで校内を全てカバーするよう指導する。教頭は「問題が起きた時、原因や経緯が一目瞭然だ。かつては保護者は教師を信頼していたが、今は『カメラ』を信じる」と苦笑した。

     長年続いた「一人っ子政策」などによる少子化で、子どもの安全への関心は中国でも高く、5日に開会する全国人民代表大会(全人代=国会)でも議題となる見込みだ。

     この学校の監視室は普段、無人で施錠されており、教師も担当職員の立ち会いの下でしか視聴できない。だが、一部の学校は専従職員が常時カメラ映像をチェックし、居眠りなどする生徒を見つけると校内放送で注意するという。保護者がスマートフォンを通じて教室の生中継を視聴できる学校もある。

     「教室は公共の場であり、プライバシーはない。生徒はもう慣れている」。教頭は言い切った。多くの保護者が監視を支持する一方、インターネット上の書き込みをみると、生徒たちは「まるで監獄だ」「カメラのない場所でいじめが起きれば止められない」と反発する。

     昨年、こうした教室の監視映像がネット上で生中継される「事件」が起きた。

     複数の監視カメラメーカーが「気軽に映像をシェアし、外出先で視聴できるように」と監視映像の共有サイトを運営。教師が「保護者のために」と利用した結果、誰でも教室の生中継を見られるようになった。サイトには教室のほか、商店や飲食店内の従業員や客、自宅でくつろぐ住民の様子など、あらゆるカメラ映像が流れ、「行き過ぎだ」と批判を浴びた。

     大手サイト「水滴直播」の運営会社は当初、取材に対し「映像のネット公開は利用者自身の操作による。教室の視聴はパスワードが必要なように仕様変更し、店舗などでは『ネット公開中』とその場に掲示するよう求めた」と釈明した。しかし、騒動は収まらず、同社を含む複数のサイトが昨年末に一斉にサービスを停止した。一部メディアはネット管理を強化する当局の介入を指摘する。

     中国でも先端技術が個人の生活空間を脅かす懸念は徐々に強まっている。教育シンクタンク「21世紀教育研究院」の熊丙奇・副院長は「四六時中監視された子どもらは『良い子』を演じて内面を隠すような人格形成上の悪影響が懸念される。カメラ設置は慎重にすべきだ」と警告する。一方でプライバシーや規制の壁より、利便性や効率を優先する大胆さが中国社会に活力を生み出す側面もある。

     社会に張り巡らされた監視の網は人々に、習近平国家主席が国民に約束した「素晴らしい生活」をもたらすのか、それとも自由や信頼をむしばむのか。教頭は「生徒の心はカメラに映らない。過度な依存は禁物だ」と言いつつ最後に付け加えた。「日本も監視の効果を味わったら、使わずにはいられなくなる」【全人代取材班】

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