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橋爪大三郎・評 『モノに心はあるのか 動物行動学から考える「世界の仕組み」』=森山徹・著

 (新潮選書・1296円)

 奇妙な書名だが、なかみは本格的である。文体が柔らかい。凝り固まった自分の生き方が、解きほぐされるような爽快感がある。

 本書は大きく三章からなる。第一は、世界のあり方。世界とは《私たちが認識し、また、想像しうるあらゆるモノゴトの集まり》のこと。コーヒーを飲もうとマグカップを手に取った。それは「コーヒーを飲みたかったから」か。そうとも言い切れない。「コーヒー、飲む」のほかにも「カレー、食べる」「音楽、踊る」などの可能性があり、それらが抑制され、この行為が成り立つ。でもその決まり方は不確かで見通せない。「コーヒーを飲みたかったから」はむしろ、行為のあとででっち上げられるのでは。こうして著者は結論する、《私は、多数の行動決定機構を備えるがゆえに、全体として機械にはなりえない、個性、柔軟性、自律性を備える家族的行動決定機構である》と。「家族的」とは、みんなが自由で自立しているのに、全体としてまとまりがあることをいう。

 第二は、言葉のあり方。言葉は糸電話のように、話し手の頭のなかみ(意図)を聞き手の頭(理解)に送り込むわけではない。意図も理解も言葉を交わす中であいまいに立ち上がってくる。言葉の意味がはっきり決まっていると思うのは大人の思い込みで、子どもはそれ以前を生きている。言葉とは本来「状況依存型」ではなく、「創発型」コミュニケーションなのだと、著者は言う。

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