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松原隆一郎・評 『保守の遺言 JAP.COM衰滅の状況』=西部邁・著

 (平凡社新書・950円)

 一月二十一日の早朝(というより深更)、西部氏は縄でみずからを縛り入水した。筆者は二日後の密葬に参列したが、棺の中から「どうだ、うまくやったろ?」と語りかけてきそうな綺麗(きれい)な死に顔だった。

 本書口述の手直し完了が前年の十一月三十日。それからテレビの収録を四回すませ、あとがき執筆が一月十五日。それで公的な活動をすべて終え、縄や現場に残す遺書を準備したのだろう。密葬ではソプラノ歌手らによる「ダンチョネ節」斉唱があったが、予期していたのだとすれば計画が完璧すぎる。それほど感動的な歌であった。

 自裁の理由は前著『保守の真髄』(講談社現代新書)で明かされた。自分が「病院死」したときに迷惑をかけて構わないほどの契りを交わしたのは亡妻のみ。愛娘であっても焼かれた世話への返礼が十分にできないというのだが、筆者は本書に描かれた矜恃(きょうじ)の持ち方が大きいと思う。「ヨッパラッテ意味不明の言動を他者にみせつけてしまうような醜態をさらしたことが、たぶん他人を信じないという警戒心が強すぎるせいなので…

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