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第103回全国高校野球選手権

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春を輝け

夢を支える/中 聖光学院・石田安広コーチ(40) 心に寄り添い絆育む /福島

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寮の食堂で夕食をとる野球部員らと談笑する石田安広コーチ(中央)=伊達市馬場口の聖光学院寮で 拡大
寮の食堂で夕食をとる野球部員らと談笑する石田安広コーチ(中央)=伊達市馬場口の聖光学院寮で

 <第90回記念選抜高校野球>

寮生90人と共に生活

 全国から甲子園を目指して集まった野球部員のための寮が、聖光学院にある。ここで生活する約90人の大所帯をまとめるのが寮監を務める石田安広コーチ(40)=福祉教諭=だ。

 高校時代、福島商の主将として甲子園を目指した。だが、2年生の夏は県大会の決勝で、3年生の夏は準決勝で敗れ、夢に手が届かなかった。「あのとき勝っていたら、コーチになってなかったかもしれない」。胸に残る悔しさが、指導者として甲子園を目指す道を選ばせた。東京国際大を卒業後、4年間、福島商などで講師をしながら、野球部の部長を務めた後、聖光学院のコーチとなった。

 妻倫美(ともみ)さん(41)と2010年から、寮内の6畳一間で暮らす。最初は「厳しくすることで選手の心の隙(すき)をなくそう」と部員の行動に目を光らせ、叱ることが多かった。

 そんな接し方が、11年3月の東日本大震災を機に変わった。多くの寮生が実家に帰る中、家が津波で流されたり、ふるさとが避難指示区域に指定されたりして帰れない10人ほどが寮に残った。気丈に振る舞う部員たちを前に、思った。「今、この子たちを守れるのは自分だけだ」

 「指導者と部員」ではなく、自分の子のような存在として石田コーチの目にうつるようになった。厳しくするだけではなく、寄り添うことを心がけると、今まで気付かなかった姿が見えてきた。

 伸び悩んでいると焦る部員。重圧と不安を抱える主将--。「お前はどうしたい」。部屋に呼んで耳を傾けた。一対一で向き合うと、部員たちは少しずつ心の内を見せ始めた。「中学まではレギュラーだったのに、高校に入ってまわりのレベルの高さに圧倒された」「キャプテンになって、どうチームをまとめていいかわからない」。気がつけば、深夜まで語りあうことが増えた。

 「部員のことを考えている時間が長いから、自分のことでは悩まなくなりました」と石田コーチは笑う。グラウンドと寮で、常に見守る日々。「部員が成長してくれた時がうれしい。甲子園で活躍する姿を見ると、やっててよかったと思えるんです」。たくましく焼けた顔にちょっと不似合いな優しい目を細めた。

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