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 NHKから「残したい日本の美201」を題材に「視点・論点」で話してもらえないか、という打診が来た。その本を私は長い間忘れていた。確かに2006年に監修を依頼され、今はもうない出版社から刊行した。200以上のテーマに写真をつけたわかりやすい本で、私は序文も書いている。

 読み直してみると、冒頭にいきなり「伝統とは意志である。その時代の人々が残したい、と思ったものだけが残る」と書いている。これは今の私の考え方と寸分たがわない。それにしても怖い話だ。当時の私もそう思ったようで、「残したいと思わなかった膨大なものが、私たちの知らない歴史の闇に消えて行った」と続けている。

 江戸時代の生活や文化でも、闇に消えてしまったもののほうが多い。過去を研究しそれについて書いている者も、すくい取ることができるのはわずかだ。渡辺京二は「文化は生き残るが、文明は死ぬ」と書き、江戸文明は「逝きし」つまり死んでしまったのであり、私たちが見ている江戸文化は、死んだものの「面影」で「断片の残存」だとした。そのとおりだ。渡辺の真意は、江戸文明に対する切ないほどの強い憧憬(しょうけい)である。

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