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社説

自民党の緊急事態条文案 「劇薬」の扱いが軽すぎる

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 大規模災害や戦争などに国家が対処する緊急事態条項を憲法に設けるべきかどうか。自民党憲法改正推進本部で5種類の条文案が示された。

     緊急時に国会議員の任期を延長する案から、自民党の2012年改憲草案に沿って政府への権限集中と人権制限を盛り込んだ案まで幅広い。

     現行憲法にあるのは、衆院を解散しているときに内閣が参院の緊急集会を求める規定くらいだ。

     東日本大震災では被災地の地方選挙を延期できる特例法が制定されたが、国会議員の任期は憲法で定められており、法令で延長できない。

     そのため、同本部は国会議員の任期延長特例を憲法に設ける案で党内の意見集約を図ろうとしてきた。

     ところが、1月の本部会合では「理想の自民党案」を作るべきだとの異論が噴出した。

     12年草案では、首相が緊急事態を宣言し、政府が法律と同じ効力の政令を制定できる。何人も国の指示に従わなければならないとの規定もあり、国家統制色が強すぎて、他党の理解を得るのは難しい。

     そこで同本部が目を付けたのが既存の災害対策基本法だ。大規模災害時に政府が生活物資の配給や物価統制などを政令で行える同法の規定を憲法に書き込もうというのだ。

     きのうの本部会合では、対象を「大地震その他の異常かつ大規模な災害」に限定する案が示されたが、有事も対象にすべきだなどの意見が出て、まとまらなかった。

     結局、自民党の本音は国家権力の強化にあり、現状を追認する「お試し改憲」を突破口にしたいようだ。

     現行憲法は、軍部の暴走や言論・思想統制を許した旧憲法の反省に立ち、国民の人権を最大限尊重することを原則としている。「公共の福祉」を理由に人権は制限され得るが、極めて抑制的でなければならない。

     国民の生命・財産を守る緊急事態条項の議論自体は否定しない。だが、一歩間違えれば、憲法の基本原則を揺るがす「劇薬」にもなる。

     今月25日の自民党大会に間に合わせたい同本部は「本部長一任」を取り付けたが、スケジュールありきの生煮えの議論で扱うべきではない。

     現行法に問題があれば正し、どうしても法令で対応できない場合に初めて憲法論議に進むのが筋だ。

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