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余録

「絶えまない地震にゆられつあかき目の…

 「絶えまない地震(なゐ)にゆられつあかき目のおんなじ貌でむすび食ひたり」。東日本大震災で毎日歌壇に寄せられた福島県南相馬市の児玉邦一さんの歌である。おにぎりの食事が続く毎日、同じ不安を映す顔だった▲同じ日の同じ欄には東京都町田市の冨山俊朗さんの「込み合える車内に席を譲る人増えた気がする大地震より」がある。惨禍に打ちのめされながら互いを気遣い、悲しみや不安を分かち合う被災者の姿は全国の人々の心を揺さぶった▲巨大災害に直面した人々は境遇の違いを超え、連帯と献身の共同体をたち上がらせる。ある米国作家はそれを「地獄が作る楽園」と呼び、災害ユートピアともいう。がれきと化した町々で人々は心の壁を取り払い災害に立ち向かった▲それから7年。「被災」は多くの人で分かちあうものから、被災者個々の事情で千差万別のものになった。喪失の悲しみも心深く納めた方もいれば、長い喪が続く方もいる。歳月は日一日と被災を個別化し、目に見えなくしていった▲復興に注目すれば、仮設から移り住む災害公営住宅(復興住宅)は9割が完成した。失われた町も震災前に想像もできなかった姿を形にしつつある。だが復興が進むほど置き去りにされたような孤立感、喪失感に苦しむ人々がいる▲私生活を守れる壁をようやく再建した復興住宅では壁の中の孤独死が増えている。ますます目に見えなくなる「被災」に共感の手を差し伸べるにはどうすればよいのか。「災後7年」が問う文明の質である。

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