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沼野充義・評 『世界イディッシュ短篇選』=西成彦・編訳

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 (岩波文庫・994円)

マイナー言語で書かれる「世界文学」

 イディッシュ語と言っても、多くの読者にはあまりなじみのない言語だろう。東欧系ユダヤ人が日常的に用いた話し言葉であって、中世の高地ドイツ語をもとに、ユダヤ人の聖なる言葉であるヘブライ語を取り込み、ユダヤ人の移住先のポーランド、ロシアなどのスラヴ諸語との接触を経てできあがった。筆記にはローマ字ではなく、ヘブライ語と同様に、ヘブライ文字が用いられる。

 イディッシュ語は長いこと、ドイツ語の「崩れた」ユダヤ方言のような扱いを受け、なかなか独立した価値のある文化言語と見なされなかった。しかし、ブロードウェイの人気ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』の原作者、ショレム・アレイヘムや、ノーベル文学賞を受賞したイツホク・バシェヴィス・ジンゲル(シンガー)などの有力なイディッシュ語作家が現れ、狭いユダヤ人コミュニティだけに限らず、広く世界で知られるよう…

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