女性たちの「満州」開拓史

庄村允子さん(87)=長野市/6 人生を変えた選択 /長野

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かくまわれ15歳で結婚 庄村允子(かずこ)さん

 途切れ途切れの記憶をたどろうとしても、暗い地下貯蔵庫のあるその家にたどりついた直前の経緯はよく思い出せない。空腹と疲れで、まわりを見る余力が残っていなかったらしい。詳しい話は後で夫が教えてくれた。

 行列とはぐれた私たちが、鎌を振り回す男たちに取り囲まれていたその時、一人の男が銃を担いで、私たちの方へ歩いてきた。その男に、道ばたで一人の老人が声をかけたという。「殺してはいけない」。銃を持った男は命令に逆らえなかった。金を工面するため、楊(ヤン)というその老人の名前を借りたことがあったのだ。楊さんは他の男たちにも殺生をやめるよう説得し、800軒ほど家が並ぶ集落にある、部屋が三つの土壁の住まいに私たちを招き入れた。

 休みなしに山の中を歩き続けた私は、1週間ほど眠り込んだ。目を覚ましてからしばらくすると、一緒にかくまわれていた女の子たちが次々、近くの家へ嫁にもらわれていった。そこでは、嫁を迎える際その実家に大金を払う風習があり、避難中の日本の女の子をもらえば安上がりだというので、どの家もこぞってもらいたがったのだ。14歳の私はまだ子供だからと、息子たちと暮らす楊さんの家にとどめ置かれた。

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