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ハーグ条約

「子の返還拒否は著しく違法」最高裁初判断

ハーグ条約実施法に基づく子の返還手続き

 国境を越えた子の連れ去り防止を定めた「ハーグ条約」に基づく裁判所の返還命令に従わないのは違法だとして、米国在住の父親が息子(13)を連れて帰国した母親に子の引き渡しを求めた人身保護請求の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は15日、「父親の請求を認めるべきだ」として、父親側敗訴とした1審判決を破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻した。

父敗訴の1審破棄

 最高裁は「裁判所の返還命令に従わず子を保護下に置くことは、特段の事情がない限り著しく違法な身体拘束に当たる」との初判断を示した。国内では、子を連れ帰った親がハーグ条約に基づく裁判所の返還命令に従わないケースが相次いでおり、最高裁は条約手続きの順守を強く促した形だ。

 判決によると、争っているのは米国で暮らしていた日本人夫婦。母親が2016年に息子を連れて帰国したため、父親がハーグ条約の国内実施法に基づいて東京家裁に息子の返還を申し立てた。家裁は返還を命じたが、母親は応じず、強制執行のために執行官が自宅を訪れた際にも引き渡しを拒んだ。

 父親は息子の引き渡しを求めて人身保護請求の裁判(2審制)を起こしたが、1審の名古屋高裁金沢支部は昨年11月、「息子は自らの意思で日本に残ることを選んだ」として請求を退けた。

 これに対し最高裁は、息子の意思について「11歳で帰国して母親に依存せざるを得ず、母親の不当な心理的影響を受けていると言わざるを得ない」と指摘し、本人の自由な意思とは言えないと判断した。その上で、息子の引き渡し手続きを行わせるために高裁に差し戻した。裁判官5人全員一致の意見。

 ハーグ条約は、親の一方が断りなく16歳未満の子を国外に連れ出した場合、残された親の求めに応じ、原則として子を元の国に戻さなければならないとしている。日本は14年に加わり、昨年10月までに98カ国が加盟する。【伊藤直孝】

子巡る争い、長期化回避

 ハーグ実施法の引き渡し命令を拒むことが原則として違法になると示した15日の最高裁判決は、子を巡る親同士の争いが長期化することを避けようとする狙いがあるといえる。

 外務省によると、同法に基づく裁判所の返還命令は今年2月までに23件出された。このうち6件で引き渡しの強制執行に至ったが、いずれも親の抵抗で実現しなかった。

 人身保護請求の判決に従わない場合は、2年以下の懲役や罰金の刑事罰が科される可能性がある。条約の手続きに詳しい山本和彦一橋大教授(民事法)は「今回の判決により、両親の争いが早期に和解や調停で解決されることが期待できる。返還命令が十分履行されないと言われる現状について、制度の再考を示唆したとも言えるのではないか」と見る。

 今回のようにハーグ実施法、人身保護請求と異なる裁判を繰り返す当事者の負担は大きい。弁護士の間では、ハーグ実施法の執行手続きが「厳密すぎる」との批判もある。子の利益を最大限に重視した上で、親同士の泥沼化する争いをどう決着させればいいか、更なる議論が求められる。【伊藤直孝】

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