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第103回全国高校野球選手権

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燃えろ聖陵

初めての春 支える人たち/4 愛する「息子たち」運ぶ 野球部OB会副会長・松下英二さん(53) /愛媛

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「聖陵愛」で運転を続ける松下英二さん=松山市久万ノ台で、中川祐一撮影 拡大
「聖陵愛」で運転を続ける松下英二さん=松山市久万ノ台で、中川祐一撮影

 <第90回選抜高校野球>

 試合や遠征の際、選手たちが移動するバスの運転手を務めているのが松下英二さん(53)だ。松山聖陵野球部OB会の副会長でもある。「母校のためにできる限りの恩返しがしたい」。その思いでハンドルを握る。

 今でこそ母校が大好きだが、在校時は少し違った。聖陵に入学したのは「中学3年の時の担任が勝手に推薦書を提出したから」。野球部に入部したのも「部長に『とりあえず名前だけ書いて』と言われて…」。そんな青春時代。「『なんで聖陵に入ったのだろう』ってずっと思っていた」と笑う。

 当時の野球部は「甲子園なんて目指せるレベルじゃなかった」という。しかし練習は厳しかった。50人以上の同級生が入部したが次々と退部し、最終的には9人まで減った。最後の「夏」は初戦でコールド負け。自身も「代打要員」としてベンチ入りした。大学では野球をせず、運送会社に就職。トラックドライバーとして仕事に打ち込んだ。

 結婚して2人の娘の父となったが、「2人とも女の子というのもあってか、母校の球児たちが息子のように思えた」。公式戦だけでなく、練習試合やグラウンドでの練習も見に行くようになった。かつて部員だったころとはチームの「レベルが違う」と感じ、甲子園を目指す「息子たち」を心から応援した。

 5年ほど前、運転手の話をもらった。荷川取秀明監督(36)から「ドライバーがいないので手が空いていたら助けてほしい」と声を掛けられた。二つ返事で引き受け、坊っちゃんスタジアムへの送迎や、中国地方への遠征でも運転手を務めた。「ありがとうございました」と部員たちが大きな声であいさつをしてくれると、運転の疲れも吹き飛ぶ。

 「聖陵愛」。大好きな言葉だ。高校時代の担任で、現在も聖陵で勤める白方三喜教頭(60)が酒席でよく口にしていた。「野球が縁でいろんな出会いに恵まれた。聖陵で良かった」。汗を流した日々を誇りに思う。

 「聖陵の部員たちと触れ合えるのが本当にうれしい。運転ができなくなる日まで続けますよ」【中川祐一】

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