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明秀日立・初のセンバツへ 第3部 希望を集めて/上 活躍が市民の励みに 高萩市、地域活性化の願い託す /茨城

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明秀日立進出までの苦闘を語る草間吉夫・元高萩市長=高萩市内で 拡大
明秀日立進出までの苦闘を語る草間吉夫・元高萩市長=高萩市内で
野球部員が暮らす寮の正面玄関に掲げられた「明高館」の一筆=高萩市石滝の明秀日立高高萩キャンパスで 拡大
野球部員が暮らす寮の正面玄関に掲げられた「明高館」の一筆=高萩市石滝の明秀日立高高萩キャンパスで

 <第90回記念選抜高校野球大会>

 「落胆していたところだったので、渡りに船だった」

 草間吉夫・元高萩市長(51)は、当時の出来事や気持ちをびっしりと書き込んだ手帳をめくりながらそう振り返った。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生からちょうど1年半となる2012年9月11日、明秀日立の金沢成奉監督(51)が就任のあいさつに訪れた。市役所は震災で壁や柱が損傷。倒壊する恐れもあったため、当時はプレハブの仮庁舎だった。

 2人は東北福祉大(仙台市青葉区)の同級生。だが旧交を温めるだけが来訪の目的ではなかった。

 市長応接室で向き合うと、金沢監督はこう切り出した。「工業高校の跡地はどうなりましたか。あそこを使わせていただけないでしょうか」

 08年に閉校した県立高萩工業高校(高萩市石滝)の跡地を巡り、市は4年にわたり、有名私大の教育施設を誘致しようと動き、実現寸前までこぎつけた。だが原発事故による汚染への懸念を理由に断られた。

 冷え込んだ地域を活性化する起爆剤にと期待していただけに落ち込んだ。草間氏は「最高の案件だった。原発事故が恨めしかった」と明かす。

 それだけに「あそこをグラウンドや寮として使いたい」との金沢監督の申し出はありがたかった。「ぜひやりましょう」と、その場で即答した。

 約2週間後、高萩市に衝撃的なニュースが飛び込んだ。環境省が突如として、市内の国有林を原発事故で汚染した「指定廃棄物」(放射性セシウム濃度1キロ当たり8000ベクレル超)の処分場候補地にすると発表したのだ。

 草間氏はすぐに断固拒否の姿勢を示した。当時のブログには、農業や商業など市内のさまざまな団体への反対署名の協力要請や、県知事への要望など、国に白紙撤回を求める悲壮な闘いぶりがつづられている。

 そんな苦境にあって、明秀日立の進出は希望の光に見えた。金沢監督との再会からわずか1カ月半後、県から跡地を購入し、野球部などの練習グラウンドや寮として貸し出す意向を表明した。

 同省は13年2月、市の強い反対を受けて計画を白紙撤回する。草間氏は「明秀日立の存在は大きな支えになった。心強かった」と打ち明けた。

 同年9月4日、野球部員らが暮らす「明高館」が完成する。明秀の「明」と高萩の「高」に、江戸時代の藩校のような学舎になるよう願いを込めて「館」とした。名付けたのは草間氏だ。市長を降りた現在も後援会長を務め、明秀日立との縁は続いている。

 「子供たちが来て明るくなった。あそこで練習する子供たちが全国で活躍するのは市民の励み、何より希望になっている」

    ◇

 融合第3部では、明秀日立野球部の躍進に、学校と地域の希望を見いだした人々の奮闘を描く。【川崎健】

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