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モリシの熊本通信

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必要なのは「想像力」と「備え」 /佐賀

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 今週、私が専門とするマーケティング関連のカンファレンス参加のため、米国ネバダ州ラスベガスに滞在した。きらびやかなイメージの街だが、昨年10月1日、「米史上最悪」といわれる銃乱射事件が発生したことは、記憶に新しい。

 同日午後10時過ぎ、2万人以上が集まった野外コンサート会場に、突然銃声が響いた。近くのホテルの32階から男が銃を乱射。死者・負傷者合わせて500人以上を出す大惨事となった。

 今回、時間を作り、現場に足を運んだ。「ゲート1」と英語で書かれた入り口は閉ざされ、中の様子をうかがい知ることはできない。入り口手前のフェンスには、「HOPE」(希望)と書かれた飾りが結んである。そのすぐそばに、ハートが描かれたカードと花もある。数メートル離れた位置では、キャップ帽を被った観光客風の若い白人男性が、フェンスに手を掛け、目を閉じている。

 振り返ると、大通りをはさんで数百メートル先に、犯人が銃を設置していたというホテルがそびえ立っていた。昼間だと、部屋の窓一つ一つの形状を、はっきりと確認できる距離だ。あの場所から銃弾が降り注いだ。

 事件当時、コンサートの観客らは、どこから銃弾が飛んできているのか分からなかったという。恐怖だったであろう。想像しただけでも、背筋が凍る。犠牲者の冥福を祈り、そっと手を合わせた。

 事件や事故、災害においては、「想像力」と「備え」が必要であると感じる。もちろん、想像や備えにも限界があるかもしれない。しかし、犠牲者、負傷者が出た場合、単に「想定外」で済ませてよいものか。銃乱射事件では、まさかホテルから銃撃をするとは、誰も想像しなかったであろう。しかし、起きてしまった。

 熊本地震でも、まさかあれほど車中泊者、そしてエコノミークラス症候群の重症患者が出るとは私自身、想像していなかった。しかし、起きてしまった。

 起きたことを検証し、対策を取る。虫の目、鳥の目の双方で。想像力を働かせながら。繰り返すが、安易に「想定外」で片付けることだけは避けなければならないのだ。


 ■人物略歴

田中森士(たなか・しんじ)

 マーケティング会社「クマベイス」(熊本市)代表取締役、ライター。熊本県立高常勤講師、全国紙記者を経て古里の熊本市で起業した。熊本地震後は、復興支援活動に携わりながら、執筆やイベントを通し、被災地の現状を伝えている。モリシは愛称。熊本市南区在住。

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