メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

今週の本棚

小島ゆかり・評 『紀貫之』=大岡信・著

 (ちくま学芸文庫・1188円)

粘り強い評論家と情熱的詩人が同居

 大岡信が遺(のこ)したおびただしい業績のなかでも、とりわけ力漲(みなぎ)る壮年の名著である。

 「貫之は下手な歌よみにて古今集はくだらぬ集に有之候」。つとに知られたこの断言は、正岡子規による和歌革新運動の言挙げとなった連載歌論「歌よみに与ふる書」(新聞「日本」)の第二回冒頭の一文である。紀貫之及び『古今集』の歌人たちにとってはずいぶん迷惑な話である。じっさいに非難すべきものとして子規の念頭にあったのは、旧態の歌風であって、貫之や『古今集』そのものではなかったはずだから。

 自然主義と写実主義を標榜(ひょうぼう)した子規は、貫之ならびに『古今集』を排して、『万葉集』ならびに実朝など万葉調歌人を推賞した。それはつまり、「激烈な伝統破壊者のような登場の仕方をしながら、じつは、すぐれた偶像破壊者であり、結果的にはもう一つ別の伝統の発掘者、顕彰者、継承者となったのが、子規の仕事の意味だったのだ」と著者は言う。その上で、この子規以来のイメージを覆し、貫之及び『古今集』の文学的…

この記事は有料記事です。

残り1030文字(全文1499文字)

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 長女はひつぎにうどんを二つ… 原爆小頭症の吉本さん逝く 孤独と痛みに耐えた74年

  2. 120度の高温で生息する微生物群発見 海底下1200メートル掘削調査

  3. ORICON NEWS 『鬼滅の刃』2日連続で全国5紙ジャック、朝刊に広告「想いは不滅」 主要15キャラの名言&作者メッセージ掲載

  4. 特集ワイド 菅首相の手法、強権的 有言実行、だから信じたが… 江田憲司・立憲民主代表代行

  5. 「自分が冤罪被害とは」事故1年後に逮捕の母 乳幼児揺さぶられ症候群

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです