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開いた扉・旧優生保護法を問う

/1(その2止) 消えぬ障害者差別 「適法」の壁、訴訟決意 宮城の60代女性

60代女性に開示された手術記録の一部のコピー。手術理由に「遺伝性精薄(精神薄弱)」、手術方法に卵管を縛る「マドレーネル法」とある=宮城県内で2018年3月24日、遠藤大志撮影(画像の一部を加工しています)

 

     宮城県の60代女性が、全国初の国家賠償請求訴訟を仙台地裁に起こすことにつながった同県の「優生手術台帳」は、女性が開示請求する4カ月前の2017年2月下旬、子育て支援課で発見されていた。きっかけは、厚生労働省からの調査要請だった。

     発見数日前の同22日、日本弁護士連合会が、旧優生保護法(1948~96年)下で強制不妊手術を受けたという宮城県内の70代女性の人権救済の申し立てを受け、被害者への謝罪や補償を求める意見書を厚労省に提出した。その記録の有無などを確認するため、同省担当者が宮城県に電話をしたのだ。

     指示を受けた子育て支援課の相沢明子課長補佐は、文書管理目録にある「優生手術台帳」を捜した。永年保存扱いとなっているのに、所在が不明だったからだ。相沢補佐ら課員数人は、古い資料が保管されている地下1階の倉庫に向かった。

     一日中捜したが見つからず、相沢補佐は7階の子育て支援課に戻ると「念のため」と自分の机のそばにある高さ約2メートルのキャビネットを開いた。現在の業務資料ばかりだが、上の棚の隅の古い冊子群が目に留まった。そのうちの1冊に手を伸ばした。「灯台もと暗し」だった。

     台帳には63~81年度に強制手術された859人分の記録があった。保存期間の終わった手術申請書などをわざわざ転記したものだった。こうした台帳は全国的に珍しく、相沢補佐は「当時の職員が保存の必要性を感じたのでは」と推測する。

     ただ、70代女性の記録はなく、台帳はキャビネットに戻された。そのときはまだ、この1冊が事態を変える役割を果たすとは誰も想像していなかった。

        ◇

     「(手術記録を)開示することと決定した」。その4カ月後、宮城県に開示請求した60代女性の義理の姉は、県からの開示記録を何度も読み返した。70代女性が国に救済などを求める活動を知り、手術記録を手に入れる難しさを痛感していた。姉はほっとした直後、妹が手術された年齢に驚いた。当時の法律でも結婚ができない15歳だった。「ひどい……」。言葉が続かないほど怒りに震えた。

     ただ、女性や姉はいきなり提訴しようとしていたわけではなかった。当事者が初めて手術を証明できたことで、すべての被害者救済の突破口になると考え、厚労省に実態調査を求めた。しかし、応対した担当者は「当手術は適法に行われた」と繰り返すばかりだった。そのかたくなな態度は、現在に続く障害者差別の「元凶」のように思えた。

     「もう、提訴しかない」。女性は今年1月末、全国初の国賠請求訴訟に踏み切った。仙台地裁に提訴した後の記者会見で、意思をうまく言葉にできない女性に代わり、姉が訴えた。「障害者を排除する『優生思想』は今も残っている。だからここ(提訴)まできました」=つづく

       ×  ×

     初めて光が当たり始めた強制不妊手術の実態。長い沈黙を破った関係者たちの証言などを報告する。

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