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シリア難民

留学生で来日 学び癒やす、戦禍の傷

大学の自習室で日本語を勉強するシリア人の男性。春休み期間中でも毎日のように学校へ通い勉強を続けている=兵庫県西宮市の関西学院大で、久保玲撮影

 内戦が続くシリアからの難民を、日本に留学生として受け入れる取り組みが始まっている。内戦に突入して今月で7年。約560万人が国外に避難しているなか、教育を受ける機会を奪われた人たちに学んでもらう試みだ。難民認定に厳しい日本での新たな支援の形が模索されている。

     「平和な日本で勉強ができて、とても幸運です」。関西学院大(兵庫県西宮市)で学ぶシリア人男性(31)は、経営学修士の取得を目指している。

     留学生の受け入れは2016年に政府が表明し、国際協力機構(JICA)が昨年から始めた。シリア隣国のヨルダンとレバノンで、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に難民登録された大卒程度の22~39歳を対象に、5年間で最大100人を受け入れる。文部科学省も国費外国人留学生制度の枠を拡大して同じ5年間で50人を招き、合わせて最大150人となる。JICAの第1陣19人は昨年8~9月に来日。計11の大学院で最長3年間学ぶ。

     男性は第1陣の一人でシリアの首都ダマスカス出身。09年に大学を卒業後、製造業の会社に勤めていたが、内戦が激化すると仕事場周辺で銃撃戦が頻繁に起こり、実家も空爆された。「生活できない」。13年1月にエジプトへ、10カ月後には好条件の仕事があったヨルダンに渡った。16年11月、インターネットでJICAの事業を知り応募。昨年2~5月に筆記試験と面接を受け、5月28日に合格を知らせるメールが届いた。そのメールは今も大事に残してある。

     留学は2年の予定だが、ダマスカス近郊の東グータ地区で空爆が相次ぐなど、内戦終結の見通しは立っていない。「シリアに帰りたいが、内戦が終わっていなければ日本で仕事を見つける必要もある」と日本語の習得にも必死だ。大学の日本語の授業とは別に日本語教室に通う。フェイスブックや無料通信アプリ「LINE(ライン)」も日本語で書き込んで練習する。

     ダマスカスには両親と兄がおり、スマートフォンで連絡を取り合う。両親は訪日を「いいチャンス」と後押ししてくれた。「何もできないことがつらい。今は勉強を頑張り、シリアに帰った時にはそれを生かせるようにしたい」。自らに言い聞かせるように語った。

     法務省によると、日本でのシリア人の難民申請は11~17年に81人あり、認定は12人。認定はされなかったが、人道的配慮で56人の在留が認められた。17年の全難民申請者は過去最多の1万9629人、認定は20人にとどまる。認定NPO法人「難民支援協会」(東京都新宿区)広報担当の田中志穂さんは、日本の難民認定は「迫害」の立証を厳しく求めるうえ、政治的にも受け入れようとする意思が不十分だと指摘する。

     同協会も日本語学校や大学と協力し、トルコ在住のシリア難民を留学生として受け入れている。初めて実施した昨年は10~20代の6人が来日し、首都圏と関西の日本語学校2校に通う。今年も新たに6人が来日する予定。国連はさまざまな形での難民受け入れを推奨しており、田中さんは「留学生として来日してもらうことで、政府とともに民間でも難民受け入れの責任の分担を果たしていきたい」と話している。【久保玲】

    ことば「シリア内戦」

     2011年3月、シリア南部ダルアーで中東の民主化要求運動「アラブの春」に触発され、アサド政権を批判する落書きをした少年が治安当局の拷問を受けたことに対して抗議デモが起きた。長年の独裁に反発するデモが各地で拡大し、政権が武力弾圧したため内戦に発展。ロシアが軍事介入するなど外国勢力も絡んで複雑な構図となっている。UNHCRによると、国外に逃れたシリア難民の受け入れはトルコの355万人を筆頭に、レバノン99万人、ヨルダン65万人などで、欧州ではドイツが最多の43万人。

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