特集

第103回全国高校野球選手権

第103回全国高校野球選手権大会(8月10~29日)の特集サイトです。

特集一覧

第90回選抜高校野球

伊万里らしく最後まで 八、九回に連続得点 追い上げにスタンド沸く(その1) /佐賀

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷
【伊万里-大阪桐蔭】試合後、甲子園の土を集める伊万里の選手たち=森園道子撮影
【伊万里-大阪桐蔭】試合後、甲子園の土を集める伊万里の選手たち=森園道子撮影

 <センバツ甲子園>

 センバツ連覇を狙う強豪に一矢報いた。第90回記念選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)第4日の26日、21世紀枠で初出場の伊万里は、第2試合で大阪桐蔭(大阪)と対戦し、2-14で敗れた。高校トップクラスの相手に序盤から大量失点したが、終盤に集中打で追い上げる粘りを見せた。伊万里市内の高校で初の甲子園初戦突破は今回もかなわなかったが、三塁側のアルプススタンドからは、春夏通じて初めての舞台を踏んだナインらに「良かったぞ」「頑張った」と温かい拍手が送られた。【池田美欧、蒔田備憲】

 ▽2回戦

伊万里

  000000011=2

  53040110×=14

大阪桐蔭

 八回表、攻撃はあと2イニングを残すのみとなっていた。優勝候補の大阪桐蔭打線の鋭い打球にナインは必死で飛びつくが、14点のリードを許していた。しかし、このままでは終われない。

 スタンドを埋め尽くした応援団が祈るように見つめる中、1死から6番・山口瑞希選手(3年)が四球を選ぶ。続く末吉竜也選手(3年)はセオリー通り、「初球で勝負する」と決めていた。インコースに甘く入った直球を振り抜くと、快音と共に打球はぐんぐん伸び、左翼のフェンスを直撃した。末吉選手が「感触が良すぎて思わず一塁ベースを踏み忘れた」と言う会心の打撃に、スタンドからは割れんばかりの歓声が上がった。

 待望の初得点に末吉選手の父建作さん(46)は「意地の一発だと思う。誇らしい」とぼろぼろと涙をこぼした。伊万里が1988年夏の佐賀大会で4強になった時の主将、横田好雄さん(47)は「強い相手でも食らい付けば点は取れる。最後まで戦い抜いて」と興奮しきりだった。

 これで試合の流れは伊万里に傾いた。八回裏、山口修司投手(3年)がこの試合初めて3者凡退で抑える。最終回、先頭打者の犬塚晃海(てるみ)主将(3年)が左翼に三塁打を放って足がかりを築いた。

 打席には代打の切り札、前川一球選手(2年)が入る。ツーストライクに追い込まれた4球目、内角低めの直球に「体が反応した」と、左中間を破る適時二塁打でたたみ掛け、2点目を奪った。最後まで諦めないナインの姿にスタンドの熱気は点差を感じさせないほどの最高潮に。生徒らは抱き合い、球場に校歌が響き渡った。

 スクールカラーのえんじのメガホンを握って声を上げた来海杏香さん(3年)は「伊万里らしく最後まで一生懸命やってくれた。甲子園に出たことを誇りにして練習してほしい」と同級生らの健闘に感謝した。


 ■青春譜

感じた力の差と手応え 梶山勇人捕手(3年)

梶山勇人捕手 拡大
梶山勇人捕手

 打者と一番近い距離に座り、大阪桐蔭のスイングの速さを肌で感じた。「1球1球頭をフル回転させて、常に冷静でいる」と試合前は思い描いていた。だが、チェンジアップなどの変化球が甘く入ったところを、各打者は見逃してくれない。20安打を喫した。

 21世紀枠での選出以降、「サングラスをした選手」と注目を浴びた。小学3年の時、目の病気「翼状片」にかかった。紫外線やほこりが目に入ると視力が低下し、最悪失明する恐れがあるため、プレー中はサングラスが手放せない。

 サングラスをかけることを提案したのは母貴子さん(53)だった。当時所属していた少年野球チームのコーチだった父康則さん(49)は部員全員に説明してくれた。「学校に行きたくない」と悩んだこともある。しかし今は、「甲子園に出ることで病気のことを多くの人に知ってもらいたい」と前向きに考え、「両親にも恩返しできた」と胸を張る自分がいる。

 山口修司投手(3年)が力を振り絞って投げたこの日の151球から、学んだことは少なくない。後半からは内角と直球を多めにし、ペースを取り戻した。打撃では2安打を放った。春の日差しを浴びながら感じた力の差と手応え。もう次の夏が待ち遠しくなっている。【池田美欧】

次に読みたい

あわせて読みたい