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シリア難民

命がけの国境越え 内戦、残るISの脅威

トルコ出国の許可を求め列を作るシリア難民=トルコ南東部キリスで2018年3月12日午前、高橋宗男撮影

 7年以上続く内戦で、560万人以上が国外に逃れ、610万人が国内避難民となったシリア。隣国トルコには今も難民の流入が続き、その数は350万人を超える。軍が国境管理を強化する中、戦火で家を追われた人々は命がけで国境を越えていた。【トルコ南東部アンタキヤなどで高橋宗男】

    身を寄せるトルコ南東部アンタキヤの友人宅で国境越えについて語るウンム・アリ(仮名)さん=2018年3月11日午後、高橋宗男撮影

    トルコへ350万人流入

     「胸まで水につかり、水路を100メートル以上渡った。寒くて凍えそうだった」。今月9日に密入国したばかりのシリア北部カフルヌーランの女性(24)は、ずぶぬれになって国境を越えた夜のことを振り返った。本名を出さないでほしいと要望し、ウンム・アリ(アリの母)と名乗った。トルコ南東部アンタキヤに住む同じシリア難民の友人宅に身を寄せる。

     今年2月中旬からの度重なる越境の試みは、そのたびにトルコ兵に見つかり失敗。国境沿いのオレンテス川をボートで渡ろうとして捕らえられ、28時間拘束されたこともあった。唯一の密入国地点とされるシリア北西部ダルクーシュから、19回目でようやくシリアを後にした。

     昨春、甲状腺がん治療のため合法的にトルコに入国し、シリアに戻った。その間にトルコの規則が変わり、シリア人の再入国が認められなくなった。「密入国なので治療が再開できるかどうか……」。表情は暗い。

     もう一つの気がかりは、残してきた幼い2人の息子たちだ。治療を中断してシリアに戻ったのは離婚するためだった。2月中旬の再渡航直前に息子たちに会った時、「トルコに連れて行くなら子供たちを殺す」と脅す夫に「もう会わない」と約束させられた。「これが運命です」。寂しげにつぶやいた。

    毎晩200人挑戦

     シリア国民を追い立てるのは内戦だけではない。壊滅状態とされる過激派組織「イスラム国」(IS)の脅威も続いているのだ。

     トルコ南東部シャンルウルファ。シリア難民のハリド・ムハンマドさん(21)は弟家族も含め総勢20人で4部屋のアパートに暮らす。シリア東部アブカマルを昨年11月に離れ12月トルコに入った。

     故郷には、ISの「首都」とされたシリア東部ラッカやイラク北部の主要拠点だったモスルから逃げてきた戦闘員らが集まっていた。「たばこを吸ったと言って家を押収し、髪形が西洋的だと言ってはキリストのようにはりつけにした。宗教を理由にして、一般市民を相手にやりたい放題だった」と振り返る。

     IS掃討作戦で戦争状態の故郷に見切りをつけトルコを目指したが、経由地の支配勢力の検問所を通るたび、数十ドル(数千円)の通行料を強要された。「ISも他の武装勢力も大して変わらない」と吐き捨てるように言った。

     2グループという大人数で越境する必要があったため、密入国業者にも5000ドル(約52万4500円)以上を支払った。移動中に子供たちが泣いて国境警備兵に気づかれないよう、業者に渡された薬を飲ませ眠らせた。

     アブ・セイフォと名乗るシリア北西部ダルクーシュの密入国業者(22)は電話取材に「トルコ入りを図るシリア人は増えている」と語る。「シリア政府軍に大金を払って国境までたどり着いた人もいると聞いた」という。

     毎晩のように200~300人が越境を試みるが、失敗も多い。「昨晩は(国境警備兵に)銃撃され中止した」という。国境越えの手引きの相場は1人当たり250ドル。「10日前に14人のグループを送り込んだ」と自慢げだった。

     一方、故郷の状況が改善して帰還を目指す人たちもいる。

     トルコ南東部キリスの国境ゲートには、数十人が列を作り出国許可を得ようとしていた。4日間並び続けているというラッカ出身のムハンマド・ジャシムさん(24)は、トルコ政府の滞在許可証がないため、出国の許可が下りないとこぼした。「非合法な存在だから、合法的には戻れない。トルコの密入国業者に頼るしかない」。帰還も命がけだ。

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