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強制不妊訴訟

差別なき未来のため 初弁論傍聴の義姉

旧優生保護法の下で強制された不妊手術について国に損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論を前に、寄せ書きなどを手に仙台地裁に入る支援者ら=仙台市青葉区で2018年3月28日午前9時31分、喜屋武真之介撮影

 「不良な子孫の出生を防止する」と法文でうたい、障害者らへの強制不妊手術を認めた旧優生保護法(1948~96年)に対し、司法判断を仰ぐ史上初の国賠訴訟が始まった。28日に仙台地裁で開かれた第1回口頭弁論を傍聴した、原告の60代女性の義理の姉は「国が過ちを認めなければ、障害者を排除する『優生思想』はなくならない。差別のない未来のために闘う」と決意をにじませた。

 姉は午前10時半ごろ、法廷に入り、傍聴席の最前列に座った。時折メモを取りながら、国と弁護団とのやり取りを見つめた。

 終了後、地裁近くの仙台弁護士会館で記者会見に臨んだ姉は、「優生保護法は色で表すと、冬の海の色の鉛色のようだ」と語った。救済や謝罪を求める声が無視されてきた現実を言い表したもので、「国が争うなら受けて立つ。(裁判で)事実が解明されることを望む」と話した。

 重度の知的障害があり、意思をうまく伝えられない女性を司法の場に導くことができたのは、姉ら共に暮らす家族の支えがあったからこそだった。

 「(女性が)子どもを産めなくなる手術を受けた」。姉は約40年前、女性の母(故人)から告げられた。その時の義母の悔しそうな表情が忘れられない。女性の腹部に残る生々しい手術痕を目にするたび胸が苦しくなる。

 女性は、妹として大切な存在だった。家族で支え、家族も支えられてきたと思ってきた。だから、2016年7月、相模原市の障害者施設で入所者19人が殺害される事件が起きた時、逮捕された元施設職員の男の「障害者は不幸をつくる」という供述に大きな衝撃を受けた。

 女性の請求で、昨年7月に開示された記録によると、手術理由は当時の呼称で「遺伝性精神薄弱」とあった。だが、義母からは「(女性は)1歳の時の手術で、麻酔が失敗して障害が残った」と聞かされていた。遺伝性ではなく、後天的なものだと思っていた。

 実際、昨年8月に開示された女性の療育手帳交付に関する資料には「遺伝負因なし」とあった。「法律そのものも人権を軽視していたが、手術の手続きもずさんだったのではないか」。行政への不信感を一層募らせる。

 過去に同様の法律があったスウェーデンやドイツでは、補償制度を設けた。しかし、手術記録を基に厚生労働省などに謝罪などを求めても、担当者は「当時は適法だった」と繰り返すばかりだった。「法律への反省がない限り、障害者は安心して生きていくことはできない」。裁判が歴史の闇に光を当て、すべての当事者の救済につながることを姉は強く願う。次回弁論は6月13日の予定。【遠藤大志、岩崎歩】

各地に相談窓口

 原告弁護団によると、宮城県内で中学2年の時に断種手術を受け、4月にも東京地裁に国賠訴訟を起こす70代男性は「妻にも言えず悩み抜き、肩身の狭い思いで妻の死の直前に打ち明けた」という。弁護団は、当事者だけでなく家族や周囲にも相談を呼びかけており、各地の相談窓口に関する問い合わせ(022・397・7960)を受けている。

 【各地の主な電話相談先】北海道(0120・031・711)▽北海道弁護団(011・251・0377)▽山形県(023・630・3087)▽福島県(024・521・7174)▽三重県(059・224・2248)▽大阪弁護士会(06・6363・5840)▽徳島弁護士会(088・652・5908)▽広島県(082・227・1040)▽鳥取県(0857・26・7158)▽島根県(0120・012974)▽福岡第一法律事務所(092・721・1211)▽熊本弁護士会(096・312・3252=3月30日)

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