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第103回全国高校野球選手権

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センバツ90 重圧、力に変えて 木製バット職人 名和民夫さん(51)

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ミズノのグループ企業・ミズノテクニクスでプロ向けの木製バット製作を担当している名和民夫さん=岐阜県養老町で、青木純撮影 拡大
ミズノのグループ企業・ミズノテクニクスでプロ向けの木製バット製作を担当している名和民夫さん=岐阜県養老町で、青木純撮影

 <第90回記念選抜高校野球>

 プロ選手が使う木製バットを作り始めて20年以上たちました。同じものが二つとない自然素材の質を見極め、その力を最大限引き出すこと。選手が何の不安もなく集中しバッターボックスに立てるようにすること。二つを肝に銘じていますが、これで満足というバットは作れていません。

 だから、プロ野球を見る時はいつもドキドキします。自分の作ったバットを選手はどんなふうに持っているか。違和感はないか。何より打撃成績はどうか。結果が出なければ私の責任です。バット作りから引退しない限り普通の楽しみ方はできないと覚悟しています。逆に、心から楽しめるのが高校野球、そして甲子園です。印象的なプレーを見ると「あの裏側にどれだけの積み重ねがあるんだろう」と球児が過ごしてきた日々を思って感動してしまう。私も元高校球児で、とにかく練習が好きだった。練習すればするほど、「仲間と一つの目標に向かっている」と実感できるのがうれしかった。

 2008年、師匠の久保田五十一(いそかず)さんからイチロー選手=マリナーズ=のバット作りを引き継ぎました。イチロー選手からは最初に「作り手が変わるのは非常に不安な部分があります。相当な覚悟をもって仕事をしてください」と言われました。大変なプレッシャーでしたが、イチロー選手のパフォーマンスを支えるという明確な目標ができました。塗装や発送などバット作りの仲間たちと目標を共有し、それまで以上に一丸となって取り組むようになりました。

 甲子園に出場している選手たちは、大変なプレッシャーを感じているかもしれない。けれども、そのプレッシャーを力に変える方法は必ずあるはずです。高校野球は苦しいものだけど、その先にはプロでも社会人でも大学でも、あるいは趣味でも、必ず楽しい野球が待っています。楽しい野球に出合えた時に「俺のためにバットを作ってほしい」と言ってくれれば、いくらでも作ります。待ってますよ。【聞き手・青木純】=随時掲載


 ■人物略歴

なわ・たみお

 岐阜県大垣市出身。大垣工野球部時代は外野手。1985年にミズノに入社し、ゴルフクラブ製造部門、物流部門を経てバット職人の道に。仕事の合間を縫って社内の軟式野球チームでプレーを続けている。

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