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朝鮮半島をめぐる関係国の駆け引き、すなわち大がかりな外交ゲームが始まったととらえるべきだろう。
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が電撃的に中国を訪れ、習近平国家主席と会談した。権力を握って6年余りにして初の外国訪問で、習氏との会談も初めてだ。
両首脳は朝鮮半島の「非核化の実現」で一致したという。
しかし、具体的な中身は明らかになっていない。北朝鮮が条件を一方的につり上げたり、周辺国への脅威が残ったりするのでは意味がない。その点を注意深く見極めていかねばなるまい。
冷え込んでいた中朝関係は、これで改善基調に転じた。核開発に反対する国際社会の意思を北朝鮮に伝えるためにも、中朝間のパイプが機能することには意味がある。
金氏の訪中目的は、米韓との首脳会談を来月以降に控えて自らの交渉力を強めることだと考えられる。
「非核化」という原則にあらかじめ合意しておくことで、中国に後ろ盾となってもらうことを期待できる。仮に米朝会談が決裂したとしても、米国に軍事介入の口実を与えないための保険として中国との関係を固めておく意味もあろう。
中国にも朝鮮半島問題で影響力を維持できるメリットがある。中朝関係はこれまでも悪化と修復を繰り返してきた。朝鮮戦争を一緒に戦った「血盟」という意識は薄れてきたものの、日米韓と対峙(たいじ)する上での利害を共有する関係は変わらない。
金氏の父である金正日(キムジョンイル)総書記は2000年の南北首脳会談の前後に中国、ロシアとの首脳会談を行った。実現はしなかったが、米朝首脳会談も模索した。
核・ミサイル開発が進んだ現在の情勢は当時より深刻だ。
金氏はトランプ米大統領との会談で局面転換を図ろうとしているのだろう。だが、中途半端な妥協は許されない。北朝鮮が非核化へ向けて実際に動くまで圧力は必要だ。それを待たずに、中国が制裁を緩めるようなことがあってはならない。
北朝鮮は米韓への批判を手控えつつ、日本非難は続けている。そんな見え透いた離間策に乗せられてはいけない。急激な展開に対応する日本の外交力が問われている。