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御園座・再起の幕開け

/下 地元の声に寄り添い 演劇文化の発信拠点に

 舞台後の歌舞伎俳優の顔に布を押し当て、化粧を写し取る「押し隈(ぐま)」。壁に飾られた鮮やかな隈取りの痕から、役者たちの熱演ぶりが伝わってくる。4月1日の再開場を待つ、名古屋市中区の御園座。ロビーフロアの一室にある「演劇図書館」は、歌舞伎の魅力を身近に感じさせる「もう一つの舞台」だ。

     建て替え前は、地下にあった。一般の観客には入りづらく感じられ、関係者以外に訪れる人はほとんどなかったという。図書館運営責任者の甕(もたい)佳代子さんは「少し約束ごとを知っているだけで、歌舞伎はずっと面白くなる」と鑑賞前の利用を呼びかける。

     御園座にとって、観客との接点強化は固定客獲得へ向けた重要課題だ。新劇場の売店は、演目によって異なる年代に合わせ、メニューを変える。かつて禁じていた客席での飲食も、幕あい(休憩時間)に限り認めることにした。「旧劇場では外に食べに出ていた。(観劇の)気持ちが途切れないよう座席で食べたかった」と話す名古屋市守山区の青木恭子さん(72)のように、改善を望んだ地元ファンの声を取り入れた結果だ。

     再開までには「御園座の灯を消してはいけない」と集結した地域の企業や市民の尽力があった。2013年、再建計画の柱である第三者割当増資にはトヨタ自動車など地元185の企業や個人が応じ、約33億4000万円を調達した。翌年には、名古屋発祥の大手企業のトップらが理事となり、NPO法人「歌舞伎と演劇文化を守る会」を設立。元東和不動産社長、神尾隆さん(75)は「名古屋は江戸時代から続く芸どころ。皆さんが二つ返事で応えてくれたのがうれしい」と話す。

     三菱UFJリサーチ&コンサルティングの試算では、新劇場には年間約190億円の経済波及効果があるとされ、地域のにぎわい創出も期待されている。

     甕さんは、図書館の資料を生かし、講習会などのイベントを通じて演劇文化の発信拠点となることを目指している。「たくさんの人に気負わず立ち寄ってもらいたい」。その願いをかなえる挑戦は、始まったばかりだ。


     ■ことば

    御園座演劇図書館

     中部地方で唯一の演劇資料の専門図書館。御園座ロビーフロアの一室に、書庫の蔵書から選んだ歌舞伎や現代劇の書籍などを展示。閲覧席も設け、室内で読むことができる。入場、閲覧は無料だが、貸し出しは行わない。公演に応じて展示を変え、原則火、木、土曜に開館。今年4、5月は公演日にのみ開館する。

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