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除草

熊手で雑草だけポイッ 「ホウキング」驚きの技

自作のホウキングを持つ古野隆雄さん=本人提供

 野菜の上を熊手でかくと雑草だけがポイッと抜ける--。除草農機具「ホウキング」がじわりと評判を広げている。福岡県で40年近く有機農業を続ける古野隆雄さん(67)が開発したもので、それまで100メートルの除草に2時間かかっていたところが、ホウキングなら1分で完了するという。4月7日には、自宅がある同県桂川(けいせん)町で製作と実演会が開かれる。その前に、魔法のような仕組みをのぞいてみよう。【江刺弘子】

見えていなかった雑草と作物の違い

 ホウキングは、数本の金属製の熊手を、それぞれの先端の針金部分が重ならないようにして固定するという、いたってシンプルな構造だ。除草効果を上げるため熊手は3本以上にするのが望ましいという。ホームセンターなどで買った熊手で簡単に作れ、費用も約5000円以下で済む。

 自作したこの除草農機具を、古野さんは愛情を込めて「ホウキング」と呼ぶ。福岡県では熊手のことを「松葉ぼうき」と言う。この“ほうき”の先端が揺れ動きながら雑草を抜いていくから「ほうきing(ホウキング)」というわけだ。

 このホウキングで畑の畝をかいていくと、土に突き刺さった熊手の先端が、雑草の根を引っかけて抜き取っていく。作物の上を通過しても抜けるのは雑草だけで、作物はびくともしない。

 除草の様子を動画投稿サイト「ユーチューブ」にアップしたところ、国内外から問い合わせが相次いでいるという。まさに「百聞は一見にしかず」とは、このことだ。

 それにしても、なぜ雑草だけが抜けるのだろうか。

 雑草を抜いた時のことを思い出してほしい。地表のすぐ下から根が生えてたはずだ。一方、野菜などの作物は種付けや植え付けをするため、土壌表面の2~3センチ下から根を張っている。古野さんは、この作物と雑草の根の張り方の違いを、除草の仕組みに活用した。

 ホウキングは、その重みや構造から、自然と土の表面から深さ1センチのところをすいていくので、根を深くはる作物はそのまま残るのだ。

ホウキングの除草の仕組み

 「雑草が作物と異なる性質を突き止め、そこを攻撃すれば除草ができる」。古野さんの考えは当たった。長年、土に親しみ、研究を続けていても気付かなかった事実。「見えているようで見えていなかった」と古野さんは話す。

モンローウオークで除草効果アップ

 ホウキングの除草のカギがもう一つある。熊手先端の針金部分の「揺動」だ。

 熊手の先端を地面に突き刺すと、地面の方向に力が働く一方、反発力で元に戻ろうとする力も働く。また地面をかくと土の抵抗で左右にも振れる。こうして先端が上下左右に揺れ動くことで、幅広く雑草の根をからめとることができるわけだ。先端部分を柄に対して斜めに付けることで、先端の針金一本一本すべてが左右に大きく揺れるようになったという。

ホウキングの除草の様子=古野隆雄さん提供

 「モンローウオークしながら除草している」。古野さんはホウキングの動きを、女優のマリリン・モンローが左右に腰を揺らして歩く姿になぞらえた。なんとも楽しいこの動きが、除草効果を向上させている。

 加えてホウキングは熊手を複数本束ねる「多重構造」だ。例えば、先端の針金部分の間隔が6センチの熊手を4本使った場合、それぞれの先端の間隔を補うように4本の熊手を重ねれば、最終的に一つの間隔は1.5センチになる。このわずか1.5センチの間を針金が左右に振動することによって、隙間(すきま)なく雑草を除去できる。

土質を改良する効果も

 最近、古野さんは気付いたことがある。それはホウキングが畑の状態をよくしているということだ。ホウキングが除草のたびに畑の土をすくことで、土壌に空気が入り、柔らかな土になっているという。

 「今後、大規模農場ではホウキング機械化が求められるでしょう」と古野さん。農機具メーカーとともに、ホウキングの機械化にも取り組むが、一方で手作りにもこだわる。「誰でも作れるし、買うだけだと、アイデアは生まれてこないから」と、その理由を語る。

 古野さんは各地にアイガモ農法を広め、2000年にはスイスの「社会起業家のためのシュワブ財団」から「世界で最も傑出した社会起業家」の一人に選出された。NHKの番組「プロフェッショナル」で知った人も多いだろう。その古野さんが今度はホウキングに挑戦している。

 日本のみならず、欧米の専門機関も興味を示しているというホウキング。4月7日は、実演会のほか「機械による除草」をテーマに神戸大の庄司浩一准教授(農業工学)らによる講演も開催する。同日午前10時から、参加費1000円。申し込み、問い合わせはメールで合鴨家族古野農場(furuno@d4.dion.ne.jp)まで。

 ホウキング勉強会と実演会(4月7日)

 ■講演会:午前10時~12時

  場所:福岡県嘉穂郡桂川町住民センター会議室

  「機械による選択除草」庄司浩一(神戸大学大学院農学研究科准教授)

  「ホウキングの仕組みと実際」古野隆雄

  「作物学的見地から見たホウキングの意味」平尾健二(福岡教育大教育学部教授)

  「機械による除草」牛島崇裕(オーレック開発)

 ■昼食と実演会:午前12時~午後5時

  場所:福岡県嘉穂郡桂川町寿命824 合鴨家族古野農場

  昼食、ホウキング製作と実演

 参加費:1000円(会場費、資料代、昼食代含む) 雨天決行

※前日までに、FAX(0948-65-2018)、メール(furuno@d4.dion.ne.jp)、電話(090-3605-1889)で申し込む。

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