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養老孟司・評 『ぼくは虫ばかり採っていた』/『絶滅危惧の地味な虫たち』

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 ◆『ぼくは虫ばかり採っていた』池田清彦著(青土社・1620円)

 ◆『絶滅危惧の地味な虫たち』小松貴著(ちくま新書・1026円)

抽象せず、実例を積み重ねた先の説得力

 虫の本が二つ重なった。ただし池田の著作では虫はむしろ背景であり、池田の主張する構造主義生物学の概説と、進化や雌雄、クマムシの問題など、池田の考え方の具体例への適用が主体となっている。逆に小松の著作は直接に虫の事例を列挙し、途中コラムとして虫マニアの行状を含めた、環境保全に関する日本社会の現状への思いが述べられている。

 池田の著作は、二十年近くにわたって書き、語ったものを集めている。かといってバラバラではなく、全体として見れば、構造主義生物学の要旨を上手にまとめて伝えている。池田の主張は決してやさしくない。また現代科学のあり方からすれば、主流から外れている。その二つの点から、池田の著作を読もうとしない人も多いかもしれない。しかも池田の表現はしばしばきわめて辛辣(しんらつ)である。

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