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旧優生保護法を問う

不妊目的で放射線 厚生省「研究」容認 被害有無不明 終戦直後に文書

「学術研究を目的としたレントゲン照射はさしつかえない」と記された旧厚生省通知文の写し(画像の一部を加工しています)

 旧優生保護法(1948~96年)が禁じた「不妊のためのレントゲン(X線)照射」について、旧厚生省が49年、学術研究が目的ならば「さしつかえない」と容認していたことが判明した。現在の医学的知見では、卵巣や精巣に一定のレントゲン照射をすると生殖機能が失われ、周辺の臓器にも障害が出る恐れが分かっている。同法で不妊手術を強制されていた障害者らが、危険な研究対象にもなっていた疑いがあり、専門家は実態の解明が必要だと指摘する。【岩崎歩、遠藤大志】

     京都府立京都学・歴彩館(公文書館)に保管されていた、旧厚生省公衆衛生局長名の通知文など複数の写しを毎日新聞が入手した。

     通知文は京都府の問い合わせに対する回答で、京都大医学部から研究目的の「レントゲン照射の可否」について見解を問われた京都府が同省に照会していた。京都府はその際、優生保護法がレントゲン照射を禁じていたため、「学術研究の特種の場合として認めてよろしいか疑義がある」との意見を付した。

     これに対し、厚生省は公衆衛生局長名で「(レントゲン照射は)優生保護法第28条の規定によって禁止されている」と指摘しながらも、「大学(医学部)等において学術研究を目的としてこれを行うことは、さしつかえないと認められる」と明記した通知を、京都府知事宛てに送付した。

     同館には、京都府が厚生省見解を京大と京都府立医大に伝えたことを示す文書が残されているが、実際に照射が行われたかの記録は確認できなかった。

     筑波大の陽子線医学利用研究センター(茨城県)長の坪井康次教授によると、レントゲン照射により卵子や精子の未分化細胞が分裂できなくなり、不妊につながることが分かっているが、現在は不妊目的の放射線照射は行われていない。被ばくによるがん化や腸炎などの障害を引き起こすなど、人体への危険性が極めて高いためだ。

     厚生労働省母子保健課は「(通知の)原本が確認できないためコメントを控える」と回答。京大の広報担当者は「資料が無いため確認ができない。コメントは控える」とし、京都府立医大の広報担当者も「資料が確認できず、コメントできない」と答えた。


     ■ことば

    不妊の線量

     国際放射線防護委員会(ICRP)などによると、レントゲン(X線)照射で永久不妊となる急性被ばく線量は、卵巣2500~6000ミリグレイ、精巣3500~6000ミリグレイで、胎児奇形の恐れは100ミリグレイ以上。検査目的のレントゲン撮影時の線量は10ミリグレイ以下で、胸部は通常1ミリグレイ未満。「ミリグレイ」は放射線照射を受けた物質が吸収する線量の単位。

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