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アートの扉

猪熊弦一郎 題名不明 画家好みの自由奔放さ

 黒いかたまりが二つ。正体は、にらみ合う雄猫たちだ。

 鼻と鼻がこすれ合うくらいの近さで対峙(たいじ)する2匹。とがった歯はむき出し。ピンと立てた前脚や丸い背中には、緊張感が漂う。あたかも簡単そうに表現しているが、特徴をよく捉えている。

 猪熊弦一郎は無類の猫好きとして知られた。夫婦には子供がおらず、いつの間にか動物を可愛がるようになったという。多いときは「いちどに1ダースの猫を飼っていた」というだけあって、生活のなかで生態を観察するのにもってこいだった。雄猫が威嚇し合う姿も面白がってたくさん作品に残しており、作風の展開を楽しむことができる。

 最初に描いたのは1933年、30歳の春。食糧難の戦争末期には疎開先にまで連れて行き、食卓の上にも自…

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