特集

第103回全国高校野球選手権

第103回全国高校野球選手権大会(8月9日~25日)の特集サイトです。

特集一覧

選抜高校野球

「助けてくれた父に感謝」三重の主将・定本

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 ○三重(三重)14-9星稜(岩手)●

 センバツ第10日の1日、準々決勝に登場した三重の主将・定本拓真投手(3年)は昨秋まで背番号1だったが、不調でエースの座を明け渡し主将も一時降ろされた。歯を食いしばれたのは社会人野球を経験した父博史さん(47)がいたからだ。この日の星稜(石川)戦は継投の最終回を無失点に抑え14-9で勝利。「出口のないトンネルのようだったが、助けてくれた父に感謝を伝えたい」と話した。

 大阪府八尾市出身。企業チーム・ミキハウス(2005年廃部)の投手だった博史さんの影響で小学校1年でソフトボール、4年から硬式野球を始めた。「父は野球一筋。厳しいことを何度も言われ苦しかった」。「家から離れたい」と、寮のある三重に進んだ。

 一方、博史さんは月1度は車を片道2時間運転し、そばで練習を見守った。ミキハウスでマネジャーに転向し、チーム活動の縮小期、仲間の移籍先を探し回り苦労した経験があるからだ。「野球ができる環境は幸せ。いつできなくなってもいいよう、悔いだけは残さないでほしかった」

 父の思いは知らなかった。昨年6月から、成長する体にフォームを合わせられなくなった。父に相談しなかったが、本音は苦しかった。周りを見る余裕はなくなり、昨秋に主将を降ろされた。毎日2時間近く自主練習を続け、寮でもシャドーピッチングを続けた。しかし、何かが違う。

 「野球やめたい」。母洋子さん(50)に打ち明けると、「やるだけやってあかんかったらやめたらええやん」と言われ吹っ切れた。無料通信アプリから父に「相談があるんやけど」とメッセージを送り、返信はすぐ来て電話もした。投球フォームの動画も送った。父の助言は的確で納得のいく制球が戻ってきた。

 約100人の部員一人一人と笑顔で話す余裕もでき、部員投票で再び主将になった。今大会の背番号は10。それでも初戦の日大三(東京)戦で公式戦初完封を成し遂げ、1日の星稜戦も期待通りのピッチングを見せた。スタンドから見守った博史さんは「自分は甲子園に出られなかったのでうらやましい限りです」。父子二人三脚、さらなる高みを目指す。【森田采花】

次に読みたい

あわせて読みたい