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第103回全国高校野球選手権

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タクト置いた星稜・吹奏楽部の大竹宏さん

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 ○三重(三重)14-9星稜(石川)●

 センバツで1日の準々決勝に進んだ星稜(石川)のアルプス席で、吹奏楽部を指揮した大竹宏さん(64)は同校に着任した40年ほど前からタクトを振ってきた。部の指揮者としていったん退いていたが、聖地で約10年ぶりに“再登板”。付属中の講師勤務も3月で終わった。この日は三重に敗れ、「私の最後にふさわしい試合」と静かにタクトを置いた。

 大竹さんは1978年から星稜の教師になり、吹奏楽部顧問を務めた。野球部が甲子園に出た時は、アルプスを一つにまとめる欠かせない存在だった。甲子園は部員にとっても周りを気にせず思い切り演奏できる空間。「失敗を恐れずにできる。とても楽しい」

 大竹さん自身が球史の生き証人でもある。延長十八回の死闘を繰り広げた79年夏の箕島(和歌山)戦は「倒れた部員がいて大変だった」。元大リーガーの松井秀喜さんが5打席連続敬遠された92年夏の明徳義塾(高知)戦でもタクトを振った。「あの歯がゆさ。ずっと心に残っています」

 甲子園の最後の応援指揮は2007年夏。60歳の定年後は星稜中学で常勤講師として教べんを執ってきたが、任期は先月31日まで。そんなさなかのセンバツ出場だった。現吹奏楽部顧問の下村健治教諭(40)らからも指揮を頼まれ「こんなにうれしいことはない」と久々にタクトを手にした。

 ブランクを埋めるため、初戦直前に約40人の部員と練習した。そこには気持ちの高ぶる自分がいた。部長の森本智子さん(3年)は「先生の指揮はパワフルで楽しい。一試合でも多く一緒に演奏したい」。チームが点を取るたび、アルプスでは伝統の応援曲「星稜コンバット」が響き渡った。初戦の富島(宮崎)戦で適時二塁打を放った南保良太郎選手(3年)は「あのメロディーが聞こえると、甲子園をホームと感じた」とほほ笑んだ。

 三重との試合には負けたものの、大竹さんは「私にとっても甲子園は汗と涙の青春やね。素晴らしい試合だった。応援させてもらい感謝している」とナインに拍手を送った。【日向梓】

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