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我らが少女A

/240 第7章 1=高村薫 田中和枝・挿画監修

 かくして浅井隆夫の場合、ある状態から別の状態への相転移はとくに決定的なきっかけもないところで起こったのだが、忍にもいまはそれに近い変化が起きようとしている。

 忍は、作業の合間にわずかな時間を見つけては父親にメールを送りつけながら、休みなく家庭ゴミや資源ゴミの収集に走り回る。動いている間だけは、警察に手足を縛られている不全感や、そのせいで何もできない焦燥感も少しは薄まる。生意気な中高生らに面を切られないよう目深に被(かぶ)ったキャップの下で、ドラクエの主人公になって想像のフィールドを駆けまわっていたころの心身の感触を思いだし、思いだし、少し離れたところからそれを眺めては、そろそろゲームも卒業だなと静かに思ったり、卒業して何をするんだ、したいことなんか何もないと自分で自分を否定したり、ゴミ箱を覗(のぞ)き込むようにしてかたちのない物思いの片々を探し続ける。

 このところ急にゲームがつまらなくなっているのは事実で、シャドバの攻略速報やモンストの獣神化もしばら…

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