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性暴力

小児性愛で再犯「自分を制御できなかった」

受刑者の男が住んでいたアパート。前回の服役後は自立のために一人暮らしをしていたが、支援員の訪問を拒みがちだったという=菅野蘭撮影

 「薬物の依存症と一緒なんです。『もう大丈夫だろう』と思っていたら、悪い意識が出てきて同じ事を繰り返してしまう」。わいせつ目的で女児(当時10歳)の後を付け、マンション敷地内に侵入したとして邸宅侵入罪などで懲役10月の実刑判決を受けた男(42)は昨年8月、福岡拘置所の面会室で記者にそう打ち明けた。最初は取材に気後れする様子も見せたが、好きな漫画などの話題で冗舌になると、事件や自身の性的嗜好(しこう)について語り始めた。

 男が女児を性の対象とみていることを自覚したのは高校生の時。当時は現在ほど規制が厳しくなかった児童ポルノ雑誌を見て性的興奮を覚えた。小中学生時代に同級生の女子から机に「ばい菌」「学校来るな」と書かれるなどのいじめを受けて以来、同年代の女性と接点を持てず恋愛感情も抱けなかった。大人の女性に対する恐怖心が小児性愛の原因だと自覚しているという。

 初めて事件を起こしたのは2004年。小学校低学年の女児に声をかけて体を触るなどし、強制わいせつ容疑などで逮捕されて実刑判決を受けた。11年と13年にも同様の事件で逮捕されて服役。「自分で自分をコントロールできなくなっていた」と当時を振り返る。

 前回13年の事件での服役中は約半年間、刑務所内で実施される再犯防止の「性犯罪者処遇プログラム」を受講した。刑務作業の傍らに週1、2回、事件に至った理由などを自己分析して他の受刑者の前で発表し、互いに意見を言い合った。「傷のなめ合い」とも感じたが、同じように悩んでいる受刑者の存在を知り、性的欲求への対処の仕方を真剣に考えるようになったという。

 出所後、小学生の登下校時間に外出しないなどと決めていたが、長続きしなかった。派遣の仕事が減って家賃が払えないなど生活が困窮すると、ストレスがたまって自らその禁を破って外出した。そして、17年3月、たまたま近くを通りかかった女児を追いかけ、マンションの敷地内に入って逮捕された。

 福岡地裁は昨年8月の判決で「女児に対するゆがんだ性的嗜好は根の深いものがある」と糾弾。一方で「改善のために治療を受ける意思を持っている」として更生への期待も示した。前回の出所時に男を支援した自立支援施設の男性は「SOSを出しているのに放っておけない」と今後も支える姿勢を示す。

 「時間はかかるかもしれないが、医療の力を借りて何とかしないといけない。普通に働いて食事ができる普通の生活をしたい」。男は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。(菅野蘭と宗岡敬介が担当しました)

再犯防止の態勢不十分

 法務省は2006年から再犯防止を目的に「性犯罪者処遇プログラム」を刑務所内などで導入したが、十分な受講時間が確保されていないことや、出所後の支援態勢の不十分さが指摘されている。

 プログラムは、事件の原因を理解して再発防止計画を作る「自己統制」や、他者への共感を高める「被害者理解」などで、再犯リスクに応じて3~8カ月間のコースがある。受講者は刑務施設職員や臨床心理士らの指導でグループワークなどを通じて課題に取り組み、必要に応じてカウンセリングを受ける。

 しかし、12年に公表された出所後3年間の再犯率追跡調査では、性犯罪の再犯率は受講者が12・8%に対して非受講者が15・4%。両者の間に大きな差がみられず、受講の効果が実証できなかった。

 性犯罪加害者の治療に取り組む「性障害専門医療センター」の福井裕輝医師は「出所後に孤立や貧困に陥ると性犯罪も含めた再犯リスクにつながる。職業訓練など幅広い復帰支援が必要だ」と話す。

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