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どうすれば安全安心

職場のパワハラから身を守るには 相手の言動、日時を記録

パワハラの判定基準

 働く人にとって、職場とは人生の多くを過ごす場所だ。ならば快適に生き生きと働ける空間であってほしい。だが現実には、その職場で深刻なパワーハラスメントが問題となっている。パワハラはなぜ起きるのか。被害を受けた場合、どうすればいいのか。専門家に具体策を聞いた。【鈴木美穂】

    身近な人に打ち明ける/「不快」その場で表明を/録音するなら堂々と

     パワハラは今でこそ広く知られている言葉だが、「本当の意味で理解されているかは疑問」と話すのは、パワハラ対策のコンサルタント会社「クオレ・シー・キューブ」の岡田康子代表取締役だ。約20年前、パワハラという概念を広めたことで知られる。現在、厚生労働省の「職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会」で委員を務めている。

     パワハラの基礎知識を整理したい。まず、適切な指示や指導、就業規則や組織の行動基準に則した注意を常識的な言動の範囲で行う場合は、パワハラに当たらない。しかし、「職場で相手より優位な立場にあることを利用して行ういじめ、嫌がらせ」は別だ。相手の人格や尊厳を侵害する言動を継続的に行い、その結果として心身に苦痛を与えたり、就業環境を悪化させたりすることがパワハラになる。「最近は『死ね』『辞めろ』などの直接的な表現は減ってきました。でも、部下に仕事を振らなかったり、質問に答えなかったり、陰湿ないじめは増えて深刻化しています。また、上司だけでなく、先輩同僚なども加害者となることがあります」

     厚労省が2016年に全国の企業・団体に勤める1万人を対象にした「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」に注目してほしい。過去3年間に「パワハラを受けた」と回答した人は32・5%(前回12年比7・2ポイント増)。1回でもパワハラを受けたことがある人に心身への影響を尋ねると、6割超が「怒りや不満を感じた」「仕事への意欲が減退した」と答えた。何度も受けた人だと、「眠れなくなった」(36・1%)、「通院したり、服薬をしたりした」(20・9%)など深刻な実態となっていた。

     企業向けのパワハラ研修も行う岡田さんは「職場の信頼関係を損ない、生産性や効率性が落ち、人材流出のリスクも生む。労働裁判になれば企業イメージにも傷がつきます。こうしたリスクを回避するためにも経営者はパワハラ問題に真摯(しんし)に取り組む必要がある」と呼びかける。

     岡田さんによると「パワハラを行う上司」には特徴がある。(1)権力を誇示したい意識(2)「自分の思い通りにいかない」との不満感が強い(3)完璧主義者--など。加害者にならないためには「『指導』の名を借りて自分の感情を発散させていないか、振り返ってみてほしい。パワハラは誰もが加害者になり得ます。一人一人が自分の問題ととらえることが必要です」。

     パワハラか、指導か--。その線引きはどこにあるのか。「職場のいじめ・パワハラと法対策」などの著書がある水谷英夫弁護士は次のように例示する。「殴ったり、たたいたり、スネを蹴ったりと刑法に触れるような行為は当然、該当します。人格を否定する発言もパワハラの代表例。『死んじまえ』はもちろん、高層階のオフィスで『飛び降りてしまえ』もパワハラです。『バカ野郎! そんなことだから○○なんだ』と怒鳴ったり、不手際があった部下に『だからダメなんだ。女房の顔が見てみたい』と侮蔑したりするのも該当します。『死ね』『万死に値する』などの発言は一発でアウト。こうした言動は仕事にかこつけた『いちゃもん』に過ぎません」

     とはいえ、上司からすれば、部下の遅刻や休業、納期遅れなど、「しかる事情」もあるのではないか。水谷さんは指弾する。「その都度、感情が爆発し、抑えられない上司の多くは自らがパワハラ行為をしていることにすら気づいていません。上司に部下が『やめてください』と反論しない(できない)のは、上司が人事権など職務上の権限を数多く持っているから。部下が何も言わないから、『許されている』わけではありません」

     こうした「力関係」の中で、部下はパワハラにどう対処すべきか。水谷さんは「ひとりで悩まず、親や友達といった身近な人に現状を聞いてもらうことから始めては」とアドバイスする。「第三者に打ち明けることで気も楽になり、アドバイスが得られるかもしれない。いざ労働紛争となれば、会話が『証拠』にもなります。もし心身に変調をきたしそうならば病院(精神科など)で診てもらい、ひとまず休暇をとるのも効果的です」

     パワハラを止めるための「具体的アクション」として、水谷さんは「上司に『今の言動は不愉快です』と伝えることが大切。併せて上司の言動や日時などはきちんと記録しておきましょう。これが自分を守ることにつながります」

     上司の言動を録音する際も「隠しどりでなく、堂々と」がポイントなのだとか。「暴言を発した上司の前に録音機を差し出し、『今おっしゃったことをもう一度言っていただけますか』と言ってみてください。上司は『まずいことを言ったかな』と気づき、次からの抑止につながります。周囲にも『目撃者』となってもらえます」

     勇気が要りそうだが、こうした手段もあると知っていれば、いざという時の「お守り」になりそうだ。水谷さんは「これで改善されなければ、さらに上の上司に助けを求めたり、パワハラ相談の社内機関に駆け込んだりするのも有効です。06年に『公益通報者保護法』が施行され、通報した個人は法律で守られます。当事者だけでなく、職場全体の人間関係も破壊するパワハラを周囲の人も見て見ぬふりをせず、当事者が孤立しないよう声かけを」などと呼びかける。

     岡田さんも「職場環境は社員一人一人が作っていることを自覚し『構造は変えられる』と信じて行動を。言われっぱなしでは上司の攻撃が強まるだけ。周囲の人とも連携しながら、改善に向けた一歩を踏み出して」と話している。

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