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余録

「目借時ゆふべのままの紙とペン…

 「目借時(めかりどき)ゆふべのままの紙とペン/井上雪(いのうえゆき)」。この目借時とは春の陽気についうとうとする眠気をいう季語。カエルが人の目を借りにくるからだとの俗説があり、「蛙の目借時」という言葉が俳人に喜ばれた▲目を借りるカエルについては、鎌倉時代の歌集にも「つとめすと寝もせで夜はを明かす身にめかる蛙(かわず)の心なきこそ/藤原光俊(ふじわらのみつとし)」がある。人とカエルとの目と眠りの貸し借りはいつごろからあったのか▲眠りの貸借といえば「睡眠負債」という言葉が昨年の流行語になった。こちらは日々のわずかな睡眠不足が借金のようにたまるという話だった。それが脳の働きを大幅に低下させるばかりか、がんや認知症のリスクまで高めるという▲この言葉を広めたNHKの番組が報じた米大学の実験によると、睡眠不足の蓄積による脳の働きの衰えはなかなか自覚しにくい。また休日の寝だめで一挙返済を図ると、かえって生活リズムを壊し、平日の負債増の恐れがあるという▲新しい生活のサイクルが始まる4月、働き盛りの20~50代で睡眠時間6時間以下の方はやはり見えない借金に気をつけた方がいいようだ。平日の睡眠時間を少しでも増やし、眠りのリズムを整えていくチャンスにもなる新年度である▲「春眠暁(あかつき)を覚えず」だが、あまり寝過ごすのも問題らしい。専門家は真っ暗な環境で通常より2時間以上寝過ごす人は睡眠負債があると思った方がいいという。うとうとまどろむ春の快楽にもおちおち身をまかせていられぬ今日の目借時だ。

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