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親ありて

柔道選手 阿部一二三さん、詩さんの両親 浩二さん、愛さん/下 結果残すほど謙虚さ求め

阿部浩二さん(右)と愛さん=松本晃撮影
昨年の高校野球兵庫大会の始球式に臨む詩選手=両親提供
昨年11月の講道館杯の女子52キロ級決勝で立川莉奈選手(奥)を破り初優勝した阿部詩選手=千葉ポートアリーナで
昨年12月のグランドスラム東京で優勝し笑顔の阿部一二三選手(左)と妹の詩選手=東京体育館で

 <くらしナビ ライフスタイル>

     昨年の柔道の世界選手権男子66キロ級で初出場初優勝を果たした阿部一二三選手(20)=日体大=と女子52キロ級で妹の詩(うた)選手(17)=兵庫・夙川学院高=は2020年東京五輪で金メダルが期待される逸材だ。一二三選手は、父の浩二さんとの連日のトレーニングの成果が出て14年に高校2年で講道館杯を男子史上最年少で制覇。しかし、16年リオデジャネイロ五輪代表選考初戦の15年講道館杯で3位に終わり、リオ五輪出場が絶望的となった。

     このとき、一二三選手は、まだ高校生。東京五輪まで残された時間がたっぷりある。柔道と距離を置き、休息をとることも頭にあった。だが、浩二さんと母の愛さんの考えが違った。「(リオ五輪出場に)1%でも可能性があるなら、あきらめないで頑張ろう」

     気持ちを切り替えた一二三選手は講道館杯翌日から練習を再開。翌春の代表最終選考の全日本選抜体重別選手権では、後のリオ五輪で銅メダルを獲得した海老沼匡選手(パーク24)を破って優勝を飾った。結局、過去の実績で上回る海老沼選手がリオ五輪代表に選ばれ、落選したものの、浩二さんは「負けを次につなげる形を学んだ。勝ちきったことで、(ライバルを圧倒する)今の一二三の立ち位置がある」と思っている。

     同じく詩選手も敗北をきっかけに成長した。最初のターニングポイントは中学2年の全国大会。狙っていた優勝を逃し、闘争心に火が付いた。「それまでは軽く勝てるかなみたいなところがあったけど、練習に真剣味が出てきた」と愛さん。高校1年の2月には15歳以上の国際大会、グランプリ・デュッセルドルフで優勝。一躍、17年世界選手権の代表争いに名乗りを上げた。

     しかし、そんなに甘くはなかった。全日本選抜体重別選手権で敗れ、日本代表の座を逃した。ショックは大きく、「学校の授業でもぼーっとして何も聞いていなかった」。愛さんは、そんな詩選手と選抜後の精彩を欠いた試合の映像を一緒に見た。詩選手は「もっとできるのに、私は何をやっているんだろう」と気づき、立ち直ったという。

     詩選手は、浩二さんからのアドバイスに耳を傾け、栄養補給にも気を配るようになった。試合と試合の間でも、食べ物を口にするように意識の変化が見られるようになった。

     兄妹が逆境に陥ったとき、両親はそっと手を差し伸べ、支えになり続けた。そのおかげもあり、一二三選手は今秋の世界選手権代表に内定した。詩選手も昨年11月の講道館杯で、兄が制したときと同じ高校2年で初めての頂点に立った。同12月の代表2次選考のグランドスラム東京では優勝を果たし、順調に歩みを進めている。テレビでも取り上げられることが多くなった兄妹だが、浩二さんは「結果を残せば残すほど謙虚でいないといけない」と手綱を締めている。

     レベルは上がり、アドバイスできることも少なくなった。それでも浩二さんと愛さんは試合に必ず駆けつけ、声援を送る。兄妹は体重が軽い方から2番目の階級で、男女が階級ごとに交互に試合を行う場合には、2人が登場する間隔が短く、愛さんは「息をするのを忘れるくらい」真剣に見守る。

     東京五輪まで残り2年半。期待されながら、結果を出せなかった2人の過去の姿を知る浩二さんは「兄妹そろって金メダルなんて、こんな幸せなことはない。でも、それが簡単ではないのはよくわかっている」と冷静に語る。その上で「そこに向かって少しでも手助けできるだけ幸せ」とも。東京五輪で同じ日に、会場の日本武道館で金メダルを首にかける兄妹の笑顔を思い浮かべながら、家族みんなで駆け抜ける。【松本晃】

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