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我らが少女A

/243 第7章 4=高村薫 田中和枝・挿画監修

 今日も多磨駅に立つ小野雄太は、結婚生活が男の心身に起こす変化の小さくないことを日々思い知らされている。向かいの果物屋の女将(おかみ)さんには、色つやがいいねえとからかわれるし、これまでどんなにしても治らなかった角膜のヘルペスが寛解したのは朗報だが、一カ月でベルトがきつくなったのはマジでヤバい。ほかにも今朝は、ミッドタウンのイルミネーションに合わせてユニオンスクエア東京の予約を取る約束を忘れていて、小野がごめんと謝ると、言い訳の一つもしてよと優子は口を尖(とが)らせ、小野は何を言われたのか、すぐには分からなかった。なんとも面倒臭いことだ。

 それでも業務は平穏だし、眼(め)の調子がいいせいで世界のすみずみまで活(い)き活きして見え、小さな…

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