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絵本「ゼツメツキグシュノオト」より

 イリオモテヤマネコやラッコ、オオウミガメなど絶滅する恐れの高い野生動物たちをモチーフにしたピアノ曲の楽譜と演奏CDが3月、発売された。題名は「ゼツメツキグシュノオト」。4月には絵本も出版される。音楽を通して絶滅危惧種に思いをはせようといういっぷう変わった企画について、曲を担当した春畑セロリさんと、詩や絵、朗読を担当した茂木淳子さんに聞いた。【小国綾子/統合デジタル取材センター】

二人三脚で楽譜、CD、絵本

 ピアノ曲「ゼツメツキグシュノオト」は東京在住の作曲家、春畑さんと、那覇市在住で「音の台所」の芸名を使って音楽活動を続けてきた茂木さんの出会いから始まった。

 沖縄のイリオモテヤマネコやリュウキュウコノハズクなど、茂木さんから絶滅危惧種の話を聞いた春畑さんは「コンビを組んで絶滅危惧種の動植物たちをモチーフにした曲を作ろう!」。茂木さんがまず絶滅危惧種を選び、その動植物についての詩とイラストを仕上げ、春畑さんがそのイメージを膨らませ、作曲することになった。

 ユニークなのは、茂木さんが選んだ動植物から連想される音楽用語を一つずつ添えて春畑さんに届けたこと。

 例えば、ヤンバルクイナには「スタッカート」(一音符ずつ短く切って演奏することを示す符号)、ニホンリスには「ビバーチェ」(活発に、を意味する速度記号)、ホッキョクグマには「ラルゴ」(ゆるやかに、を意味する速度記号)という具合だ。

 春畑さんは、それらの音楽用語を茂木さんからの“宿題”のつもりで上手に曲に盛り込み、かわいらしい小曲を次々仕上げていった。二人三脚でできあがった曲は18曲に。

 最初はピアノ用の楽譜を出しておしまい、の企画のはずだった。ところが、音楽と絶滅危惧種という組み合わせの面白さが音楽関係者や科学者たちをひきつけ、まず、全曲を収めたCDが3月発売された。さらに、茂木さんの詩とイラストをもとにした同名のタイトルの絵本が4月に出版されることに。科学者を巻き込んだ音楽と科学のコラボイベントなども計画されている。

「演奏使用料はかかりません!」

 この作品が注目されているのは、演奏や放送の使用料が2年間無料という点。日本音楽著作権協会(JASRAC)の会員ではない春畑さんが「今回は少しでも多くの人に聴いてほしい。使用料が壁になってしまうことを避けたい」と提案した。

 楽譜を出版した音楽之友社も春畑さんの気持ちに応え、演奏使用料を無料と宣言する異例の決断をした。「著作権契約をかわさないことは過去にもあったが、そんな宣言をするケースは今回が初めてだろう」(同社楽譜課)と打ち明ける。

 無料の措置は2020年3月31日まで。コンサートやピアノの発表会、環境運動のイベントや学校での読み聞かせなどの場で楽曲を演奏しても、使用料は発生しない。

音楽で絶滅危惧種に思いはせる

 作品自体は声高に野生動物保護を訴えているわけではない。むしろ、動物たちの魅力を音楽で表現しているのが魅力だ。

 たとえば、18曲のうちの1曲に取り上げられた「カカポ」は、ニュージーランドだけに生息し、今や個体数はわずか120羽といわれる飛べない大型オウムだ。ネコやイタチなど人間の持ち込んだ肉食動物に捕食され、個体数が激減してしまった。

 茂木さんは「人間の目から見れば『飛べない』だけど、本当は『飛ばない』の。かつては天敵のいない環境だったから、森の中を歩くように進化しただけ。果物や木の実をついばみながら森の中を歩くカカポの姿を想像すると、いとおしくてたまらないんです」。

 春畑さんは「カカポ、という名前の響きからしてすてきでしょう? 茂木さんの語り口を聞いただけで、1曲が書けた!と思うくらい、カカポのイメージが広がったんです」。

 こうして、2人でカカポについて語り合ううちに、少々とぼけた感じの優しい曲が完成した。

 茂木さんは「セロリさんの曲は最後に余韻が残る。言葉で野生動物の保護を訴えるのではなく、余韻が心の奥深くに残って、絶滅危惧種に思いをはせるためのきっかけになってくれたらいいなと思います」と語る。

 春畑さんも「CDを聴いておしまい、ではなく、CDを活用して絵本の読み聞かせ会を開くとか、いろいろと活用してもらえるとうれしいです。ご家庭でも親子で世界中の絶滅危惧種たちに関心を持ってもらえたらいいな」と話している。

4月28日に演奏朗読のイベント

 楽譜、CD、絵本で三位一体の「ゼツメツキグシュノオト」の発売を記念して、ピアノ演奏と絵本朗読、絶滅危惧種など生物についてのトークを組み合わせたイベント「いきもののオト、きこえますか?」が、4月28日午後3時から東京・池袋の「オクターヴハウス」で開かれる。1000円(小学生500円、未就学児無料、要予約)。

 問い合わせは、メール(kakapo@trigo.co.jp)かファクス(03・3235・5731)で「ゼツメツキグシュノオト」委員会まで。

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