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毎日フォーラム・ファイル

高齢世帯 40年に4割超、単独世帯も4割に

高齢世帯の増加や人口構成を見据えた街づくりが進められている千葉県佐倉市のユーカリが丘駅周辺=山万提供

明るい老後には住み替えや持ち家活用も

 国立社会保障・人口問題研究所が今年1月にまとめた世帯数の将来推計は、2040年に単独世帯が4割弱、世帯主が65歳以上の高齢世帯が4割超になると予測した。高齢化社会というと、どうも負のイメージがつきまとうが、街の姿や暮らし方はどうなるのか。暗い話ばかりではないのかもしれない。

     都心から1時間ほどの通勤圏にある千葉県佐倉市。市内の京成電鉄ユーカリが丘駅北口には数棟の高層マンションが建ち並ぶ。その先には緑地帯があり、周囲に戸建て住宅が広がる。この辺りはかつて一部の農地を除き山林と原野だった。

     「街づくり企業」を掲げる山万(本社・東京都中央区)が当地で宅地開発を始めたのは1971年。経緯を林新二郎専務が語る。「その10年ほど前に我々は神奈川県横須賀市で湘南ハイランドを開発した。この経験を生かし、印旛沼が近く、水に恵まれた環境の良い土地で持続可能な理想の街をつくろうと考えた」

     一般に戸建て住宅の購入層の中心は30~40代というから、30年たてば、開発された宅地の住民は高齢化していく。従って売りっぱなしの「分譲撤退型」では街の衰退は目に見えており、持続可能な街は生まれない。

     そこで同社は高齢世帯の戸建て住宅を買い取り、その資金で駅近のマンションに住み替えてもらい、戸建てはリニューアルし中古住宅として子を持つ若い夫婦に売り出す地域内での住み替えシステムを導入した。人口構成を考慮した仕組みと言え、地域内の戸数も段階的に増やしてきた。実際、79年の第1期分醸から現在までの供給戸数は7500戸超。概ね年200戸で街の規模を拡大させていることがわかる。

     一方で、同社は同駅から緑地帯を囲むように路線長約4キロの鉄道「ユーカリが丘線」を運営する。同線6駅からすべての住宅が徒歩10分を目途に建てられ、近年は高齢化に合わせコミュニティーバスも運行。地域内には自社運営の学童保育所や介護老人保健施設なども配置する。

     こうした住民サービスや施設整備などは数年おきの全世帯アンケートや同社エリアマネジメントグループによる定期の戸別訪問で積み上げた意見やニーズが生かされている。林専務は「住み替えシステムは街に住み続けてもらうための一つのスキームで、合わせて子育て環境の整備や高齢者支援、駅周辺の再開発による雇用づくりなどを進めていかなければ、持続可能な街にはならない」とし、「重要なのは住民、行政、デベロッパー(山万)による三位一体の開発」と話す。高齢世帯の増加を見越した、開発地域245ヘクタール、計画戸数8400戸、人口3万人の街づくりはさらに続いていく。

     では、今後、高齢世帯はどの程度の数になるのだろうか。15年の国勢調査を基にした同研究所の推計から15年と40年の数字を見てみよう。まず世帯総数は5333万から5076万に減少する。うち世帯主が65歳以上の高齢世帯数は1918万から2242万に増加。その割合は36.0%から44.2%に拡大する。75歳以上だけを見れば、888万世帯から1217万世帯と、増加幅はさらに大きく、高齢世帯に占める割合が5割を超えている。一方で、一人暮らしの単独世帯数は1842万から1994万に増え、過去最高の39.3%に達する。40年の65歳以上の単独世帯数は15年比で実に43.3%増の896万にも上り、高齢者の独居率は男性が14.0%→20.8%、女性が21.8%→24.5%と上昇するという。

     同研究所の鈴木透・人口構造研究部長は「高齢化が続く一方、80年前後から晩婚や未婚が増え、その頃、結婚しなかった人たちが65歳以上を迎え、今後も増えていく」と話す。その上で高齢世帯や単独世帯の増加に対し「地域や行政、企業サービスなどで支えていく必要があるだろう」と指摘する。

     高齢世帯や独居高齢者の増加などと聞くと、何かさびしげで、ともすれば孤独死などを連想し、どうも明るい将来が展望できない。ところが、博報堂生活総合研究所の夏山明美主席研究員は「人口減少や高齢化と言うと、暗い話が多いが」と前置きし、「人と人との関係が変わってきている。高齢者に限らず家族のサポートを得られない単身の人がそれこそ赤の他人と助け合ったり、一方で技術進歩で人に頼らないでも生活ができる可能性も高まっていて、必ずしも暗いことばかりではない」と話す。

     同研究所では高齢化や単独世帯の増加を想定して、人間関係と生活空間をそれぞれ「あける」「しめる」という概念で街の未来図を描いている。例えば「あける」は風呂や台所など家の機能の共有、「しめる」は家の中ですべてが完結する技術や外部サービスの導入・活用。すでに普及しつつある自動車や部屋などを共有するシェアリングエコノミーは「あける」と言えるだろうし、在宅勤務や遠隔医療・介護の広がりは「しめる」と言え、未来像が現実となっているものも多い。

     夏山氏は「『あける』はある程度人口がないと助け合えず成り立たない。人口が少ない地域なら『しめる』で街の機能を家の中に入れ込んでいくのではないか」と述べ、「生活者の選択肢が広がっていき、高齢者でも単身者でもそれぞれが工夫してハッピーに暮らしていく」と見る。

     みずほ総合研究所の岡田豊主任研究員も「2040年の高齢者はインターネットもやっているし、AI(人工知能)スピーカーなどで健康管理や生存確認も可能になり、宅配サービスも拡大する。従来かわいそうと見られていた高齢者や独り者が明るくしぶとく生きていくのではないか」と前向きだ。

     ただ「長生きのリスク」も指摘する。長く生きるほどお金が必要なわけだが、「高齢者には金融商品での失敗は許されない」とし、相続人のいない1人暮らしや夫婦のみの高齢世帯ならば、リバースモーゲージの活用が考えられるという。持ち家を担保に住み続けながら金融機関から融資を受け、死亡後は売却代金を一括返済に充てる仕組みだ。近年、空き家の増加が問題化しているが、高齢化社会においては、さらなる増加の可能性もある。適切な住み替えや持ち家の活用などは街づくりと不可分であり、高齢世帯の増加に伴う課題の一つと言えるだろう。

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