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余録

昭和初期の世界恐慌は生糸の価格暴落を招き…

 昭和初期の世界恐慌は生糸の価格暴落を招き、養蚕業が盛んな日本の農山村に大きな打撃を与えた。長野県泰阜(やすおか)村でも財政が悪化し、ほかの町村に倣って学校の先生にも給与の一部を村へ寄付してもらうことにした▲当時の泰阜北小学校の吉川宗一校長は考えた。「その場しのぎではなく、むしろそのお金を将来の教育振興に役立てるべきだ」。子供の情操教育のために美術館を建てたいという夢を持っていた▲寄付が続々と集まり、美術品が増えたが、戦争で計画は中断した。小学校の裏山に念願の美術館ができたのは、構想から四半世紀たった1954年のことだ。その美術館も老朽化した。村は修復の資金を集めるために村内外からの寄付を呼びかけた▲今でいうふるさと納税である。村は全国でその先駆けとなる「ふるさと思いやり基金条例」を2004年に施行した。返礼品はない。それでも、これまで600万円以上集まった。目標は1000万円だ▲総務省はふるさと納税の返礼品を地場産品に限るよう自治体に求める通知を出した。寄付を減らさないために、地場産でないが人気のある品々を贈る自治体があるからだ。通知を知ってがっかりする人もいるだろうが、見返りだけを求めるふるさと納税は何だか寂しい▲美術館建設をめざした吉川校長は子供たちのために「どんなに物がなく、生活が苦しくても、心だけは清らかで温かく豊かでありたい」という信念を貫いた。貧すれど貪(どん)せず。見返りを求めない真の教育者の姿だ。

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