メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

香山リカのココロの万華鏡

町ぐるみで「生きなおし」 /東京

 東京・新宿で開催中の写真展に行ってきた。タイトルは「いまを、生きる-子供達の再生と希望のひかり」。写真家の戸澤裕司氏の作品を中心に50点ほどが展示されている。

     「子供たちの再生」って何?と多くの人が興味を持つだろう。写真は不登校、引きこもり、いじめ被害、非行、発達障害などさまざまな原因で高校に通えなくなった子どもを受け入れ、学校ぐるみ、町ぐるみで“生きなおし”をさせる北星学園余市高校の生徒たちを撮ったものだ。その名の通り、高校があるのは北海道余市町。

     この高校の方針を“ごちゃ混ぜ教育”と呼んだ人がいるが、どんな問題を抱えた生徒も、年齢が10代でも20代でも、とにかくいっしょのクラスにする。学力も元気もやる気も、みんなバラバラ。さらには入学希望者は全国から集まるので、出身地さえバラバラだ。

     通学圏外から来る7割の生徒は、町内に20軒近くある下宿に振り分けられる。下宿の多くは夫婦によって運営されており、下宿生は本当の子ども同然に世話をされ、三食手作りの食事をし、ときには生活習慣のことなどで叱られる。

     「話すのが苦手」という新入生もいるが、授業、部活、弁論大会や文化祭などの行事、下宿での集団生活、さらには町の人たちとの活動などを通して、生徒たちは「人間って信頼できるんだ」と気づいていく。

     展示された写真に、うつむいた低学年らしき女子の肩を行事で隣に座った別の女子がそっと抱いている一枚があった。下宿の前で男子の入寮者たちが記念撮影風に撮った写真もあったが、気の弱そうな子も金髪の子も、みな同じようなポーズでキメていて、思わず笑ってしまった。

     人は変われるし、やり直せる。そのタイミングは、いつからでも誰といっしょでもだいじょうぶ。北星余市高校はそのことを実践してみせてくれる、ある意味で最先端の人生道場といえる。

     ただ、場所が北海道であること。それからいまの時代、親も子どもも「実家で」という希望が増えていることで、入学者数は減っており、数年前から存続の危機にあると報じられている。私も昨年、実際に高校や下宿を見に行って、「ここを必要としている子どもや親はたくさんいる」と改めて思った。おそらく日本では例を見ない、やり直し教育、ごちゃ混ぜ教育の北星余市高校が、これからも自然と文化がいっぱいのあの北の町で輝き続けてほしい、と願っている。(精神科医)

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 大阪ミナミ アメ村 防犯カメラ全81台、苦渋の撤去へ
    2. スポットライト 小池徹平さん 自由のために戦う
    3. 殺人未遂 男性刺され重傷 通り魔の可能性 千葉の路上
    4. 福井豪雪 セブン50時間休めず 経営夫婦、本部に要請認められず
    5. のぞき 「5年間で300回」 容疑で教諭逮捕 大阪府警

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]