連載

暴力の記憶

セルビア、クロアチア、ボスニアの3民族が戦った旧ユーゴスラビアのボスニア紛争から四半世紀。当時、性的暴行の被害に遭った女性たちは、今も暴力の「記憶」を引きずり、深刻な心身の傷に苦しんでいた。

連載一覧

暴力の記憶

ボスニア「民族浄化」から四半世紀/2 格差なき補償、女性に 国家内国家、救済の壁

  • ブックマーク
  • 保存
  • メール
  • 印刷
訴訟に敗訴し、送られてきた裁判費用の督促状に憤るセミカ・アジッチさん=ボスニア北東部ツズラで2018年3月8日、三木幸治撮影
訴訟に敗訴し、送られてきた裁判費用の督促状に憤るセミカ・アジッチさん=ボスニア北東部ツズラで2018年3月8日、三木幸治撮影

 「裁判費用3000マルカ(約20万円)を支払え」。ボスニア・ヘルツェゴビナ北東部ツズラ近郊に住むセムカ・アジッチさん(64)の自宅に2月、3度目の督促状が届いた。アジッチさんが戦争被害の補償を求めて提訴し、敗訴したためだ。「セルビアに息子を殺され、私は性的暴行を受け奴隷労働もさせられた。そのうえ大金を払う? あり得ない」。アジッチさんは声を荒らげた。

 ボスニアには紛争後、ボスニア人、クロアチア人主体の「ボスニア連邦」とセルビア人主体の「スルプスカ共和国」の二つの「国家内国家」ができた。外交などは主権国家のボスニア・ヘルツェゴビナが担うが、財政、戦争補償など実務は連邦とスルプスカに権限がある。性暴力被害への補償について、双方の意見は真っ二つに割れた。

この記事は有料記事です。

残り741文字(全文1070文字)

あわせて読みたい

マイページでフォローする

この記事の特集・連載
すべて見る

ニュース特集