SUNDAY LIBRARY

武田 砂鉄・評『深夜のラジオっ子』村上謙三久・著

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自分のために話しているそんな場所を残したい

◆『深夜のラジオっ子』村上謙三久(けんさく)・著(筑摩書房/税別1600円)

 深夜ラジオを聴いていると「自分の部屋とラジオブースしかこの世にはないんじゃないかという錯覚にも陥る」と漏らす著者の姿勢に頷(うなず)く人は、本書にたちまち没頭するはず。その「錯覚」を作り出してきた構成作家10人の証言を重ねていく本書は、思春期にクラスの主流ではいられなかった人々による、「自分が入れそうな気がする、一番楽しそうなところ」(石川昭人)での発奮が生み出してきた文化をじっくり知らせる。

 自分にとっても、伊集院光の番組を中心に、深夜ラジオの存在は、学び舎(や)で闊歩(かっぽ)する「うまいことやってる奴(やつ)ら」を心の中で引っぱたくための拠(よ)り所だった。120分のカセットテープで録音するのが常道だが、テープがすぐに伸びてしまう難点があり、それでも金がないので胡散(うさん)臭いメーカーのカセットに手を出す……限られた世界の全員が知るエピソードが愛(いと)おしい。

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