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我らが少女A

/248 第7章 9=高村薫 田中和枝・挿画監修

 忍は、雇用主からの一方的な解雇通告は法令違反であるとか、労基署に駆け込むといった発想は持ちようもなかったが、かといっておとなしく頭を垂れたわけでもない。会社をあとにするとき、休憩室のロッカーを二つ三つ、同僚の私物のバットでボコボコにし、ついでにガラスも叩(たた)き割って、数分後には自分が解雇されたという事実も自分が放った最後っ屁(ぺ)も、明確なかたちを失っている。その一方、今度仕事を失ったら神経がもたないと思っていたのに、実際にクビになってみるとそうでもないことに拍子抜けもした。こんなに簡単なことなら、びくびくして身の丈に合わない苦役に耐える必要はなかったということだ。先日、勤め先に言わないでくれと警察に懇願する必要もなかったということだ。しかも見ろ、なんだか身軽になったように感じるし、コンサータが効いているのに妙に頭が回転していて、飛び跳ねたいほどだ--。

 そんな躁(そう)状態の身体のまま忍は足の向くまま電車に乗る。IC乗車券のおかげでいちいち行き先を決…

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