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エンタメノート

「野球愛」空回り リスナー置き去り「サンデーライオンズ」

 渡辺謙太郎、池田孝一郎、山田二郎、石川顕(あきら)、松下賢次、林正浩……。「懐かしい」と思う方もいることだろう。TBSラジオのナイター中継を支えた名実況アナウンサーの方々だ。

 首都圏のラジオ聴取率調査でV100、100期連続トップになったTBSラジオは、昨年度で65年にわたったプロ野球中継から撤退。今春から平日夜はワイド番組に切り替えた。土日の中継は2010年に終了。その頃から撤退を検討してきたという。聴取率の低下やコストがかかるなどが理由のようだ。

 東京西部が地元の私はTBSラジオにダイヤルを合わせることが多かった。というのも、当時はTBSが一番クリアに聴けたから。撤退は昨年中に発表されていたが、いざプロ野球シーズンが始まると、「TBSでナイターをやってない」のは寂しい気持ちだ。

 かつて若者文化を育てたラジオ業界は今、ネット時代にどう生き残ろうか必死だ。パソコンやスマホで雑音なしの高音質でラジオを聴けるアプリ「ラジコ」を始めたり、AM局の多くが「災害対策等のための補完的放送」として高音質のFMでも放送する(ワイドFM・TBSラジオは90.5メガヘルツ)など、力を入れているが、今やスマホで好きな音楽や映画を安価で好きな時に楽しめる時代。ラジオを聴いたことないという若者も少なくない。

 これまでのリスナーを大事にしながら、新しいリスナーを育てる、というのがラジオの生き残る唯一の方法なのだろう。ところが、そんな時代に今、ちょっとした「騒ぎ」が起きている。

 FM NACK5(ナック・ファイブ)は埼玉を中心に聴かれているFM局。西武鉄道は大株主で、開局当初から、週末に地元・埼玉西武ライオンズの中継を続けてきた(現在は日曜のみ・平日は文化放送が中継)。

 今季、日曜の番組「サンデーライオンズ」は「新しい形のプロ野球放送」を掲げスタートしたが、ライオンズファンからの批判がSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に相次いでいる。というのも、ラジオのプロ野球中継では必須の実況、「三回の表、ライオンズの攻撃、ワンナウト一、二塁、バッターは……」といった部分がほとんどなく、球場の歓声をバックに「野球大喜利」などのコーナーが進んでいくのだ。そして、ライオンズファンの批判に対する番組側のコメントはいまだになく、局側とリスナーとのすれ違いが続いている。

 中継の映像を見ながらの副音声としてなら楽しめる内容かもしれない。実際、テレビ中継の配信会社がスポンサーになっていることから、それを意識したのだろう。だが、これまで番組を支えたファンの気持ちはこれでは収まらない。

 ラジコの有料サービス「ラジコプレミアム」で他局を聴くこともできるし、文化放送は土日もインターネットで実況中継をしているので、スマホでそれを聴くこともできる。ただ、ライオンズファンの批判が絶えないのは、これまでのラジオ局とリスナーが築いた関係が崩されようとしているからだろう。

 先日、札幌・STVラジオで35年にわたり生放送を続けた日高晤郎さんが亡くなった。自らを「ラジオ芸人」と称し、リスナーとの出会いを大事にされた方だった。「サンデーライオンズ」の「騒ぎ」を知ったら、番組で一喝することだろう。

 ラジオ局がリスナーを捨てたら、もう後はない。【油井雅和】

油井雅和

東京生まれ。早大卒。東京、大阪で、大衆芸能、笑芸、放送などを取材し、芸術選奨選考審査員、文化庁芸術祭審査委員などを務めた。沖縄好きで学生時代から通い、泡盛は糖質ゼロなので大好き。

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