メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

とうふ屋のある町はいい町だ

/1 千代豆腐店(京都市東山区) 色気漂う路地に肌しっとり

3代目を継ぐ千代直義さん=京都市東山区の千代豆腐店で、五木のどかさん撮影

 豆が好き。大豆が好き。とうふが好き。昔ながらのとうふ屋が残る界隈(かいわい)には、心地よい風情と人情が残る。「とうふ屋のある町は、いい町だ」と声にして、京のとうふ屋を巡ってみたい。

     千代と書いて「ちしろ」と読む。私が千代豆腐店を見つけたのは、底冷えのする1月の夕暮れどき。石畳の向こうに見える「とうふ」の文字が、神々しく映った。私のイメージにある「とうふ屋のある町は、いい町だ」を絵に描いたような、映画のワンシーンにありそうな、京の路地にたたずむとうふ屋さん。

     初めてとうふを買った日、店には年の頃、30歳前後の青年が、店番と仕込みをされていた。とうふ、生ゆば、おあげ、気になる品を包んでもらいながら、バーテンかラーメン屋の店主でも似合いそうな青年に、目を細めた次第。彼はいずれ、この店の3代目となるサラブレッドだ。

     次なる機会は先代も店に出てくださり、話を聞くことに。昭和8(1933)年、滋賀県栗東市生まれの千代利男さんが、この地に店を構えたのは昭和30年代初め。元の奉公先のこんにゃく屋のご主人が、お世話してくださったとか。宮川町といえば、芸舞妓(まいこ)さんが似合う粋な界隈。同業者やお茶屋さんから「お茶屋町でとうふ屋をするとは……」とささやかれたという。

     しかし、朝、店が開く頃には、鍋を持ったお客さんが大勢並んで待ってくれていた。「朝2時に起きてとうふをこしらえ、ラッパ鳴らしてリヤカーで5時から売り歩いた」。利男さん以外に、売り子さんが3人。「隣は八百屋で、ウチはとうふ屋。この裏にもとうふ屋があって、東山だけでも42軒のとうふ屋があった」。今では東山区に8軒となった。

    左から千代利男さん、鳴田厚夫さん、直義さんの3代で店を切り盛りする=京都市東山区の千代豆腐店で、五木のどかさん撮影

     店は娘婿の鳴田厚夫さんが継ぎ、孫の直義さんと共にとうふを作る日々。明け方から店に出て、おあげを揚げる利男さんの傍らでは、三つ年上の“お母ちゃん”がおあげを整え、仕分けするところから一日が始まる。

     滋賀県産の丸大豆オオツルを使うとうふは、しっとりなめらかで、やさしい味わい。まるで「液体とうふ」を思わせる豆乳は、これまで味わった中で、最もトロミある濃厚な豆乳だった。

    とうふ、厚揚げと濃厚な豆乳=京都市東山区の千代豆腐店で、五木のどかさん撮影

     髪は黒々、お肌しっとり、とうふ肌。孫とモテ度を競い合う85歳の利男さん。色っぽい町を半世紀以上見守ってきた“色気のある大将”が、家族で営む京都・宮川町、千代豆腐店。

     牛若丸と弁慶の決闘が行われた「京の五条の橋の上」(五条松原橋)も近く、鴨川沿いの桜並木が美しいエリア。お稽古(けいこ)から急ぎ足で帰る舞妓さんと出くわすことも。店のある静かな通りは、石畳がきれい。清水寺、六道珍皇寺などは徒歩圏内。(豆・豆料理探検家 五木のどか)


    千代豆腐店

     京都市東山区新宮川町松原下る/電話075・561・4484/日曜定休/10~18時ごろ


     五木のどかさんの「豆なブログ」はhttp://mame-lab.jp/

    関連記事

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 万引き犯 メルカリ内で捜索 書店、執念の「御用」
    2. チリ 「121歳」の男性死亡
    3. 受刑者逃走 なぜ捕まらないのか 2週間、延べ1万人投入
    4. ももクロコンサート 2日間で3万人が熱狂 滋賀・東近江
    5. あおり運転 容疑で元勤務医逮捕 幅寄せでバイク男性重傷

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]