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我らが少女A

/251 第7章 12=高村薫 田中和枝・挿画監修

 いや違う。見捨てられた、だと? それがどうした。これだけ裏切ってきたら、親でも愛想はつかすだろうよ。これで上等。愛想をつかして離れてお互いセーフだ。そうでないと、それこそバットの出番になる。

 そう自分に言い聞かせる端から、忍は十二年前に栂野(とがの)の家の周辺でかき集めた記憶の塊が、またぞろ暗がりからせり上がってくるのを見つめる。父親の顔はその塊の傍らに張り付いており、忿怒(ふんぬ)とも無力感ともつかない不定形の感情がその上で次々に入れ替わる。大きな捜査本部が立った大事な夜に、よりにもよって自分の息子がパクられた衝撃が小さくないのは分かるが、それ以上に自分で自分を追い込んでは行き詰まる父親のいつものパターンで、いまにも自爆しそうに見える。

 そうだ、いつか親父(おやじ)が言っていた。ああいう捜査本部に出てくる本庁の捜査一課の捜査員たちは警…

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